零細企業は大きな会社の真似をしてはいけない。

建設業は奥が深く、つかみきれない。

超高層ビルや東京ドームを建てるような、スーパーゼネコン。瀬戸大橋や高速道路を造り、日本地図を変えてしまうような大きな土木会社。地図を変えるなんて、男のロマンを感じる。それから、中堅の工務店。店舗専門の業者。造園業。解体を得意とする会社。電気屋さん、ガラス屋さん。塗装の専門から一人親方の大工さんまで。多種多様にわたり、一生かかっても極めることができない世界だ。

大きな会社は、ビルもマンションも大型店舗もこなす総合建設業でよいかもしれない。しかし零細企業は、零細企業なりのやり方を考えよう。

親方一人しかいない工務店でも、看板に「総合建設業」と掲げてある。総合的に何でも出来ない。もっと、専門性を生かして、例えば、「木造専門の工務店」「居宅のリホーム専門」「冬暖かく、夏涼しい家を提供します」「小さくてもデザインの良い家」というふうな看板にしてほしい。特化すべし。何でも出来るは、最終的にお客様に良いサービスが出来にくく、結局、いつまで経っても中途半端に終わる。

何でもやるから一応勉強する。しかし、勉強していても知識が分散されて、かえって徹底したアドバイスや的確な応用も利かない。集中ができない。サービスもワンパターンになりがち。その結果、お客さんは満足度が低くなる。リピートもこない。

特化すれば、勉強範囲も狭くなり、奥深く学ぶことができる。お施主さんの満足度が高くなる。安心を与え、リピートがかかりだす。やがては、お客さんが並ぶようになる。一知半解な提案や対応では、お客さんは満足しない。反対に、お客さんの方が勉強されている。もっとも、素人の域がでない部分もあるが、施主の気持ちを理解できていない工務店が現実に多い。顔には出さないが、面倒くさいと思ってやっているので、両者に喜びが生まれてこない。予算的な問題もあるが、そうではない。情報不足と知識不足と努力不足。だから仕事が続かない。

ゆえに、狭い範囲で勝負すべし。これだけは負けない。これだけは勝てる。ニッチトップである。

何でもやらないと仕事がない。というのは現実的であるが、戦略性に欠ける。最終的にロスが多く儲からない。本当は、特化しないと零細企業は生き残れない。戦略的に推し進めていけないところにジレンマがあるが、戦略的に行動しない。行動結果も分析しない。行き当たりばったりの経営だから、戦略的に行動してほしい。

私の得意先に、これを五年かけて徹底された小さな会社がある。お客さんが並びかけてきた。建築業界はクレーム産業と言われて久しいが、そこの工務店はクレームと思っていない。