1.概要
この指標は、財産状態の健全性を表しています。今の経審では、財務健全性指標として掲げられている一つ目の指標です。寄与度は6.8%です。
算式は、(自己資本/固定資産)×100です。
自己資本とは、資本金+別途積立金等+繰越利益金のことです。固定資産とは、土地建物、機械、車両等のことです。
上限値が350.0%(最も良い)、下限値が-76.5%(最も悪い)
固定資産が、どれだけ自己資本で調達できているか判断します。自己資本が固定資産より多くあるのが理想です。自己資本が貧弱で、固定資産が膨らんでいれば、一番悪い数値になります。その反対に、自己資本が固定資産の3.5倍もあれば、最高の数値になります。
例えば、機械や車両をローン等で購入すると、資金が長期間にわたり拘束されてしまいます。しかし、自己資金で取得すると資金繰りを圧迫しないので、それができる会社は財政上の観点から健全といえます。
自己資本が固定資産の額を超えているほど健全性が高いことになります。反対に、自己資本が固定資産を下回っているほど、その会社が不健全であることが分かります。
ゆえに、機械や車両を現金で購入できる会社になりましょう。やはり建設業は、余剰金が命です。ダム経営の実践に尽きます。
今の会社法では、資本金1円でも会社を設立できますが、建設業の許可を取得するには、1円の資本金では許可を得ることができません。許可要件の一つに「財産基礎」というシバリをかけています。一般建設業には、最低500万円以上の財産基礎を求めています。元請工事が多い特定建設業には、最低4,000万円以上の自己資本が必要になってきます。このように、建設業は余剰金を持って経営する業種です。ゆえに、余剰金が命なのです。くどいほど、どの記事にも述べている「ダム経営」を、日々の実践行為として、潜在意識に植え付けてください。
経審や分析は、社会情勢の変化に対応して、その時代に求められている建設業の方向性に適合するように改正していく必要がありますので、よく改正が行われますが、余剰金の多い会社は、どんな改正があっても、不利に傾くことはありません。建設業に関わらず、会社経営はいつの時代も自己資本の充実した会社が生き残り、多額の税金を払っています。経営とは、智慧と汗の結晶ですから、「今使えるお金」をどれだけ増やすかで勝負が決まります。余剰金を膨らますことが、この指標だけなく、経審全体に言えることですので、智慧の経営を推し進めていってください。
2.アップ対策
経営者のマインドを変えることに尽きます。経営者のマインドを変えない限り、良くなることはありません。
利益を上げ、余剰金を増やしていくことは、誰でも知っています。増資をすれば、資本金が増え、バランスが良くなり、経審がアップすることは、みんな思っていますが、実行できないだけです。なぜ実行できないのか、お金がないからです。
それを達成するには、経営者のマインドを変え、達成させる情熱と中長期的な努力で可能になります。その一番最初の経営者のマインドを変えない限り、次に進むことができません。その最大のネックが、納税意識です。この納税意識を変えない限り、経審アップや分析アップなど、小手先の方法論にしか過ぎません。
利益と納税についての考え方を知ってください。
納税額が増えることは、同時に内部留保が増えることでもあります。
日本には数多くの会社がありますが、そのうちの約7割が赤字会社であると言われています。もちろん、商売が下手で赤字になっていることがありますが、税金の支払いを逃れるために赤字をつくっている会社も非常に多くあります。
小さな会社の社長にとっては、税金対策、税務署対策も非常に重要な仕事の一つです。税務署との「ケンカ」は社長でなければできません。その意味において、これはとても難しい仕事だと思います。
しかし、これについても、社長は新たな能力を磨いていかなくてはなりません。小さな会社では、一人か二人の経理担当者を雇い、彼らが作成した資料をもとに、社長は会社の運営について判断していると思いますが、社長自身も本などで勉強し、経理の知識を身につけることが必要です。
「税金が払える」というのは、「少なくとも税金に倍するぐらいの利益がある」ということを意味しています。そもそも利益がなければ税金は払えません。
税金を払わなくても済むようにするため、赤字にも黒字にもならないスレスレのところを狙って経営する人も多くいますが、それは結局において、無駄な経費を使ったり、無駄な投資をしたりしているにすぎないことがよくあります。節税に夢中になっていると、放漫経営に陥るおそれがあることを知ってください。
「稼ぐに追いつく貧乏なし」と言われますが、毎年毎年、会社として利益をあげていくことを優先させるべきです。利益以上の税金はありえません。税金は利益の半分程度なのですから(現在は3、4割程度)、むしろ、「自分の会社も税金を納められる身分になりたい」と考えるべきです。
また、毎年毎年、納税額が増えていくことは、同時に、利益が増えていくことも意味しています。違法なことでもしないかぎり、納税をせずに利益を蓄積できた会社はないのです。納税額が増えていくことは、同時に、内部留保が増えていくことでもあります。この点を無視してはいけません。
日本という国において経済活動の場を提供され、日本人を相手に商売をしている以上、それによって得た利益の一部は国家に還元すべきです。また、お金は天下の回りものであり、自分の会社が納めた税金は、やがては商売相手のほうへも流れていきます。お金の循環、法則を知ってください。自社が納税せずに、天下の回りものにはなりません。
その意味では、「事業によって得た利益の半分程度は公金である」と考えたほうがよいのです。
もちろん、節税がいけないと言っているわけではありません。合理的な節税をすることは大事です。ただ、「節税のみに社長のエネルギーを注いでしまっては、会社の発展はありえない」ということです。
小規模企業は役員報酬で取って、増資資金にプールしておくべきです。府下、県下でBランクを目指し、大きな工事を受注するにも、余剰金が必要になります。いつもダム経営を意識され、納税と利益の意味を噛みしめてください。
3.具体的な対策
会社が所有している固定資産より自己資本が多いほど財政状態が健全ですから、自己資本の増加であり、固定資産の減少です。具体的には、次の方法があります。
① 早急に比率を上げるには、可能な限り増資をして資本金を多くすること。代表者からの借入金がある場合、これを資本金に振り替える方法があります。
② 経営活動に不要な有価証券や土地などを処分し、財務体質をスリム化することで、固定資産の割合が少なくなります。
③ 自己資本は、資本金と会社が蓄積してきた剰余金で構成されています。増資以外には、経営活動によって純利益を継続的に増すことで、自己資本の総額が増えます。