1.概 要

評価項目の一つに「自己資本額」および平均利益額(X2)があります。

今の経審は、「自己資本額」と「利払前税引前償却前利益」の2年平均(以下、「平均利益額」という)が採用されています。

自己資本額とは、決算書のうち貸借対照表の資産総額から負債総額を差し引いた純資産額の合計額をいいます。簡単にいえば、資本金+繰越利益金です。他に別途積立金などがあれば、それも足します。

平均利益額の利益とは、支払利息、法人税等、減価償却費を除いた利益を基準にしています。つまり、営業利益に減価償却費を足した額になります。その2年平均額です。

綜合評定値(P)に占めるウエイトは、15%です。平成20年改正前の10%から15%に引き上がられています。さらに、評点の上限も954点から2,280点まで引き上げられ、重要度の高い評価項目となっています。

自己資本額は、「自己資本額評点の算出式」の表で、平均利益額も「平均利益額評点の算出式」の表で、それぞれ評点を計算します。そして2つの評点を足して、2で割ります。これが「自己資本および平均利益額(X2)」の評点になります。

つまり、X2=(自己資本額評点+平均利益額評点)÷2です。

P点に換算しますと、X2×0.15(ウエイト15%)となります。

自己資本額がマイナスの場合は、0円とみなして評価されます。

 

2.自己資本額が単独でアップする

改正前の自己資本額は、年間平均完成工事高に対してどの程度の自己資本があるかを評価していました。

しかし今の経審(平成20年改正後)は、自己資本額そのものが絶対額と評価され、自己資本額が大きいほど評点が高くなります。改正前のように、同じ自己資本額でも年間完成工事高が上がれば、逆に自己資本額の評点が下がるという現象が起こりません。利益を多く残した強い経営体質が評価されます。無借金経営、ダム経営の実践に尽きます。ダム経営は、経審だけでなく、心に余裕を持って、経営を進めていくことができます。

 

3.増資の勧め(自己資本の充実)

個人的に資金余裕があれば、増資を勧めます。グループ会社等の応援も含めて、自己資本の充実のために、増資計画をなさってください。

すぐに増資資金がないならば、役員報酬から一定額を天引する形で、増資預り金として積立しておいて、中長期的に増資計画を進めてください。

役員報酬を全部持ち帰るのではなく、将来の増資積立金に当てることも、ダム経営に近づける一歩です。

 

4.平均利益額

平均利益額は、短期的な対策で評点アップが望めません。

繰越利益金は長年の営業成果が蓄積された智慧と汗の結晶ですから、飛躍的に向上することはありません。しかし、普段の経営の積み重ねですので、日々の実践行為として、常に念頭におき、余剰金を増やことに的を絞ってください。建設業は余剰金が勝負です。必ず工事代金の立替金が発生しますので、余剰金がいかに大切か、社長自身が一番よく知っています。

 

5.利益と納税についての考え方

納税額が増えることは、同時に内部留保が増えることでもあります。

日本には数多くの会社がありますが、そのうちの約7割が赤字会社であると言われています。もちろん、商売が下手で赤字になっていることがありますが、税金の支払いを逃れるために赤字をつくっている会社も非常に多くあります。

小さな会社の社長にとっては、税金対策、税務署対策も非常に重要な仕事の一つです。税務署との「ケンカ」は社長でなければできません。その意味において、これはとても難しい仕事だと思います。

しかし、これについても、社長は新たな能力を磨いていかなくてはなりません。小さな会社では、一人か二人の経理担当者を雇い、彼らが作成した資料をもとに、社長は会社の運営について判断していると思いますが、社長自身も本などで勉強し、経理の知識を身につけることが必要です。

「税金が払える」というのは、「少なくとも税金に倍するぐらいの利益がある」ということを意味しています。そもそも利益がなければ税金は払えません。

税金を払わなくても済むようにするため、赤字にも黒字にもならないスレスレのところを狙って経営する人も多くいますが、それは結局において、無駄な経費を使ったり、無駄な投資をしたりしているにすぎないことがよくあります。節税に夢中になっていると、放漫経営に陥るおそれがあることを知ってください。

「稼ぐに追いつく貧乏なし」と言われますが、毎年毎年、会社として利益をあげていくことを優先させるべきです。利益以上の税金はありえません。税金は利益の半分程度なのですから(現在は3、4割程度)、むしろ、「自分の会社も税金を納められる身分になりたい」と考えるべきです。

また、毎年毎年、納税額が増えていくことは、同時に、利益が増えていくことも意味しています。違法なことでもしないかぎり、納税をせずに利益を蓄積できた会社はないのです。納税額が増えていくことは、同時に、内部留保が増えていくことでもあります。この点を無視してはいけません。

日本という国において経済活動の場を提供され、日本人を相手に商売をしている以上、それによって得た利益の一部は国家に還元すべきです。また、お金は天下の回りものであり、自分の会社が納めた税金は、やがては商売相手のほうへも流れていきます。お金の循環、法則を知ってください。自社が納税せずに、天下の回りものにはなりません。

その意味では、「事業によって得た利益の半分程度は公金である」と考えたほうがよいのです。

もちろん、節税がいけないと言っているわけではありません。合理的な節税をすることは大事です。ただ、「節税のみに社長のエネルギーを注いでしまっては、会社の発展はありえない」ということです。

小規模企業は役員報酬で取って、増資資金にプールしておくべきです。府下、県下でBランクを目指し、大きな工事を受注するにも、余剰金が必要になります。いつもダム経営を意識され、納税と利益の意味を噛みしめてください。