○ 特殊経審の基本事項

1.合併、事業譲渡、分割の特殊経審は、申請者の有利さを考えて設けられた制度です。簡単に言えば、完成工事高が引き継げる。営業年数も引き継げる。営業年数は、ケースによって引き継げる場合と引き継げない場合があります。つまり、完工高と営業年数のメリットです。

2.吸収合併なら、合併期日が審査基準日になり、合併後の決算を待つまでもなく、特殊経審を受けることができる制度です。

3.できる制度だから、必ずしも合併期日に特殊経審を受けなくても、合併後の決算で受けてもよい。いわゆる、通常の審査基準日で「特殊経審」を受けてもよい。

4.極端な例だが、合併の2年後、3年後の間なら、特殊経審は受けられる。メリットがあるかないかは別として。

5.もちろん、実態が伴った合併、譲渡、分割であることが前提です。

 

○ 分割経審について(前提条件)

1.会社分割には「新設分割」と「吸収分割」があります。その説明は省略します。

2.経審は、通常「決算日」を基準として審査します。

分割の場合は、分割日を基準にします。分割日において、承継会社の実態が100%求められます。

3.結論

新設分割にしろ、吸収分割にしろ、実態の伴わない分割経審は認められません。

つまり、分割日に人・物・金・すべてが承継されていることがポイントです。

具体的には、施工体制や技術力、施工能力が承継会社に移行された状態で、分割経審が認められます。また、承継会社に受け皿として、同じ許可種目を取得しておくことも、当然の前提条件となります。

そのため「既存の建設会社」が、新設分割で分割経審を進めることは、物理的に出来ないことになります。なぜならば、新設会社に許可が取得できるまでは、分割法人(旧会社)で、工事を受注できないからです。「分割日」に実態が承継会社に移行し、実質的に旧会社は空になり、工事を受注できる体制ではありません。それでは意味がありません。但し、許可がなくても新設会社は、建築工事なら1,500万円未満、建築以外は500万円未満の軽微な工事は施工できます。

ゆえに、大臣許可なら約4ヶ月、知事許可なら約1ヶ月の空白期間ができますので、現実的には、新設分割はなく、吸収分割で進めるしかありません。

4.一部分割について

一部分割も可能です。

例えば、分割法人(旧会社)に土木と建築があって、土木部門を残して、建築部門だけ切り離して分割する。この場合、建築だけの「分割経審」も可能ですが、上記と同じように、分割日に『建築部門』の施工体制や技術力、施工能力などが、承継法人に移行されていることが前提条件となります。

 

○ 建設業の許可番号について

承継法人は別法人になりますので、新規許可扱いになり、新しい許可番号が承継法人にふされます。つまり、旧会社の許可番号は移行できません。

 

○ 吸収分割経審について

1.Ⅱ番の条件を満たしておれば、分割経審を受けることが可能です。

2.分割法人の「完成工事高」を引き継ぐことができます。

3.分割法人の「営業年数」を引き継ぐことができます。分割会社(旧会社)が複数の場合は、営業年数を平均します。

4.他の審査項目は、承継法人の内容によって、P点・Y点が変化します。

 

○ 雇用期間が6ヶ月を超える技術者(H23年4月以降の経審より)

1.会社分割した場合はどうなるのか。国土交通省からの通達が3月中旬にでる予定です。改正内容には分割法人から継続が可能になるので、雇用期間6ヶ月以上の問題は考慮しなくてもよいでしょう。

2.承継会社の許可取得に関して、分割法人から承継会社へ出向する専任技術者については、『雇用期間の6ヶ月』が適用されます。継続しているとは認めてくれません。よって、分割経審時には、これらの出向技術者はカウントされません。

 

○ 入札参加申請について

1.施工体制や技術力、施工能力などが、分割前と同じことが条件になります。

2.分割手続が完了し、分割に関する契約書や議事録をつけて、「分割の経営事項審査」の申請をします。その結果通知書で「入札参加申請の変更届」を各役所に提出すれば、引き続き承継会社で入札に参加できます。

3.国土交通省(近畿地方整備局/契約課)・大阪府・大阪市も同じ扱い。