賄賂は必要経費に算入できない。平成18年度改正で所得税法45条2項に追加されたからである。

賄賂が必要経費に入るかどうかについては、見解の相違があった。この点につき、平成15年10月3日に国連総会で正式に採択され、わが国も署名済の「腐敗の防止に関する国際連合条約」の12条4項が、「締約国は、・・・・・・賄賂と成る支出並びに適当な場合には、腐敗を助長するために要したその他の支出について、税の控除を認めてはならない。」と定めているため、これを受けて明文の規定を設けるのが望ましいという考慮から、平成18年度改正で、公務員に対する形法198条に規定する賄賂または外国公務員に対する不正競争防止法18条1項に規定する金銭その他の利益にあたるべき金銭の額、および金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額は、必要経費に算入しないことが明文化された[1]

警察の捜索情報を得るための情報料も、所得税法45条2項に該当する賄賂に当たるとすれば、必要経費に算入できない。反対に、賄賂に該当しなければ、必要経費に算入されるのか。

違法支出の控除については、所得税法37条の解釈で、公序に反するものは否定すべきであるという学説が唱えられた[2]

一般に、37条1項の解釈論として違法支出を必要経費の範囲から放遂することには、問題が多い。第1に、公序に反するものを除外するという文言上のてがかりに乏しい。第2に、45条1項6号が罰金・科料を列挙して必要経費不算入とし、賄賂についてはわざわざ45条2項を新設した。その反対解釈として、45条に列挙されたもの以外は、37条の要件を充足していれば必要経費にあたるとみるのが自然である。第3に、必要経費にあたるかどうかは所得金額の測定の問題であって、制裁の問題ではない。違法所得を収入に計上することを是認するのであれば、違法支出も事業に必要な経費である限り控除するのが整合的であろう[3]

結論として、この情報料も公序に反するものと解釈して、必要経費に算入されないと考える。

 

[1] 金子・同前290頁

[2] 増井良啓『租税法入門』134頁(法学教室、2014年)

[3] 増井・同前135頁