1.株券発行会社かどうか
現実に株券を発行しているかどうかにかかわらず、定款で株券を発行することを定めている場合は、株式発行会社として取り扱われる。
平成18年5月1日の会社法施行前と後で、判断が変わってくる。株式譲渡をする場合は、この点を確認してから、株式譲渡契約書などを作成する。
株券発行会社かどうかの区分
区 分 | 本来の趣旨 | 履歴事項証明書の記載 |
H18年(2006)5月1日
以前に設立 |
株券発行会社として扱われる | ①何も記載がなければ、株券発行会社である。
②株券不発行会社である記載されている場合は、株券不発行会社である。 |
H18年(2006)5月1日
以後に設立 |
株券不発行会社である。 | ①何も記載がなければ、株券不発行会社である。
②株券発行会社である記載されている場合は、株券発行会社である。 |
2.会社法第128条1項の規定
株券発行会社については、株式の譲渡時に必ず株券を売主から買主に渡さなければならず、これをしなければ株式の譲渡が無効になるという重要な注意点がある。会社法第128条1項は、「株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない(以下略)」と規定されている。
3.譲渡制限の有無を確認
譲渡制限株式を譲渡する場合は、譲渡される株式を発行した会社において、株主総会または取締役会での承認手続が必要になる。
「取締役会の承認」の場合は取締役会議事録が必要。それ以外は株主総会議事録で対応できる。
4.株式譲渡で注意すべきこと
同族会社の株式評価をする時は、相続財産の評価で株価を評価すること。
評価の仕方は、下記の参考を参照のこと。
2.作成書類
書 類 | 日付(例) | 備 考 | |
1 | 株式譲渡承認申請書 | 平成31年3月2日 | 既存株主から |
2 | 臨時株主総会議事録
又は、取締役会議事録 |
平成31年3月23日 | 履歴事項証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」を確認する。それによって、議事録が変化する。 |
3 | 株式譲渡契約書 | 平成31年3月30日 | 譲受人ごとに作成するので
複数になる場合もある。 |
4 | 株主名簿 | 譲渡後の名簿を作成のこと |
(参考)
取引相場のない株式(上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式)は、相続や贈与などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方法の配当還元方式により評価する。
1.原則的な評価方式
原則的評価方式は、評価する株式を発行した会社を総資産価額、従業員数、及び取引金額により大会社、中会社又は小会社のいずれかに区分して、原則として次のような方法で評価する。
⑴ 大会社
大会社は、原則として、類似業種比準方式によって評価する。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」及び「準資産価額(簿価)」の三つで比準して評価する方法である。
なお、類似業種の業種目及び業種目別株価などは、国税庁ホームページで閲覧できる。
⑵ 小会社
小会社は、原則として、純資産価額方式によって評価する。純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法である。
⑶ 中会社
中会社は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価する。
2.特例的な評価方式
取引相場のない株式は、原則として、以上のような方式により評価するが、同族株主等以外の株主が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方法に代えて特例的な評価方式の配当還元方式で評価する。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法である。
3.特定の評価会社の株式の評価
次のような特定の評価会社の株式は、原則として⑴~⑸については純資産額方式により、⑹については清算分配見込額により評価する。
なお、⑴~⑷の会社の株式を取得した同族株主等以外の株主については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価する。
⑴ 類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「準資産価額(簿価)」のうち直前期末の比準要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の比準要素のいずれか2つ以上がゼロである会社(比準要素数1の会社)の株式
⑵ 株式等の保有割合(純資産価額中に占める株式、出資及び新株予約権付社債の価額の合計額の割合)が一定の割合以上の株式(株式等保有特定会社)の株式
株式投資で株式等の保有割合が高い会社である。この割合が、大会社なら25パーセント以上、中会社と小会社なら50パーセント以上となる場合には、株式保有特定会社に該当する。
⑶ 土地等の保有割合(純資産価額中に占める土地などの価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(土地保有特定会社)の株式
⑷ 課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において開業後の経過年数が3年未満の会社や、類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「準資産価額(簿価)」の直前期末の比準要素がいずれもゼロである会社(開業後3年未満の会社等)の株式
⑸ 開業前又は休業中の会社の株式
⑹ 清算中の会社の株式
以上それぞれの評価方法に応じて、この取引相場のない株式を評価するときは、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を使用して計算する。
4.株式評価方法(一覧表)
評価方法 | 備 考 | |
大会社 | 類似業種比準価額(原則)
準資産価額も選択できる。 |
準資産価額で頭打ち。 |
中会社 | 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)原則
※Lは中会社の規模により0.6、0.75又は0.9 準資産価額も選択できる。 |
|
小会社 | 準資産価額(原則) | いずれか |
類似業種比準価額×0.5+準資産価額×0.5 |