建設業法8条、17条に欠格要件が載っています。一般建設業は8条、特定建設業は17条です。17条は8条の準用ですので、8条の各号に該当する者は許可を受けることができません。該当する者とは、法人の場合は当該法人、その役員及び支店長、営業所長が該当し、個人の場合はその本人、支配人、支店長、営業所長が該当します。あと法定代理人も含みます。欠格要件は11項目あります。

 

1.成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得ないもの

 

2.29条1項5号、6号により建設業許可の取消しを受け、5年を経過しない者

29条1項5号は、不正の手段により建設業許可を受けた場合。6号は営業停止処分を無視して営業したなど、特に悪質な場合に建設業許可が取り消されることを定めています。このような悪質な行為をした者に対しては、取消しの日から5年間は、許可を与えないということです。

ただし、本号に該当する者が、取り消された業種以外にも許可を受けている場合には、これらの許可の更新は認められます。

 

3.29条1項5号、6号の許可取消処分に係る聴聞の通知のあった日以降、廃業の届出をした者で、その届出の日から5年間を経過しない者

「許可を取り消される前に廃業してしまえば、許可の取消しはできない。したがって、前号の欠格要件には該当せず、新規に許可を受けることができるのでは?」と、法の抜け道を考えても、そうはいきません。聴聞の通知のあった日から取消処分があった日または処分をしないことの決定があった日までの間に廃業の届出をした者(法人または個人)は、その届出の日から5年間は、前号と同様に、許可を受けることができないのです。

許可取消しは相手方に不利益を与える処分です。不利益処分は、行政サイドが一方的に行うことは許されず、あらかじめ、相手方の言い分を聞いておかなければなりません。これを「聴聞」といいます。また、聴聞に際し、国土交通省などの行政庁は、処分をしようとする者に対して、予定される不利益処分の内容、原因等を記載した書面をもって、通知しなければなりません(行政手続法15条)。これを「聴聞の通知」といい、許可取消しの場合にも行われます。ただし、廃業した業種以外の許可の更新は可能です。この欠格要件の対象は、法人もしくは個人事業主です。

 

4.前号における聴聞通知の日前から60日以内に、前号の廃業の届出をした法人の役員もしくは政令で定める使用人または個人の政令で定める使用人であった者で、その届出の日から5年を経過しない者

前号の欠格要件の対象は、法人もしくは個人事業主ですが、本号は、聴聞の通知の日から遡って60日以内に前号の法人の役員、支店長、営業所長、個人においては、支配人、支店長、営業所長であった者も、廃業届の日から5年間は許可を与えないことにしています。

許可を受ける者の名義は変わっても、中身(同じメンバー)が同じでは困るからです。ただし、本号の役員または政令で定める使用人が、個人事業主として建設業許可を受けている場合、個人事業主としての許可の更新は認められます。政令で定める使用人とは、支配人、支店長または営業所長のことです。

 

5.営業停止を命じられ、その停止の期間が経過しない者

営業停止(28条3項、5項)を命じられた者は、営業停止が解けるまでは、他の業種の許可であっても許可を受けることができません。例えば、建築工事業者が土木一式工事の許可を受けることなどです。

 

6.許可を受けようとする建設業について、営業禁止期間中の者

建設業者が営業停止を受けたり、特に悪質な行為を理由として許可を取り消された場合、その役員および政令で定める使用人のうちこれらの処分について相当な責任を有する者は、営業を禁止されます。

営業禁止期間中の者は、営業禁止となった業種について、自ら許可を受けることができません。ただし、営業禁止となった者が個人事業主としてすでに建設業許可を受けている場合、個人事業主としての許可の更新は認められます。

 

7.禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、また刑の執行を受けることがなくなった日から、5年間を経過しない者

日本国の法律により、禁錮以上の刑を受けた者は、犯罪の種類を問わず、欠格要件に該当し、刑の執行を受けることがなくなった日から5年間は許可を受けることができません。

執行猶予を受けた場合、執行猶予期間の満了により、刑の言渡しは効力を失いますので(刑法27条)、その時点で、5年間を経過していなくても、本号の欠格要件に該当しないことになります。

「刑の執行を受けることがなくなった」とは、刑の時効が完成したとか刑の免除を受けたことなどです。

 

8.特定の法律に違反したり、特定の罪を犯したことにより刑法等の罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から、5年間を経過しない者

前号の欠格要件は禁錮以上の刑を受けた場合でしたが、建設業法など下記の表に掲げる法律に違反したり、罪を犯した者は、罰金の刑を受けたことによって、欠格要件に該当することになります。

8条8号の特定の法律、特定の罪
1 建設業法
2 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反した者に係る同法46条、47条、49条、50条
刑法の傷害罪(204条)、現場助勢罪(206条)、暴行罪(208条)、凶器準備集合罪(208条の3)、脅迫罪(222条)、背任罪(247条)
暴力行為等の処罰に関する法律に規定する罪
建築基準法9条1項又は10項前段の規定による特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した者に係る同法98条(違反建築物に対する施工停止命令違反)
宅地造成等規制法13条2項、3項又は4項前段の規定による都道府県知事の命令に違反した者に係る同法23条(違反工事に対する工事施工停止命令違反)
都市計画法81条1項の規定による国土交通大臣又は都道府県知事の命令に違反した者に係る同法91条(違反工事に対する工事施工停止命令違反)
景観法64条1項の規定による市町村長の命令に違反した者に係る同法100条
労働基準法5条、6条違反による同法117条、118条1項(強制労働の禁止違反、中間搾取の排除違反)
10 職業安定法44条違反による同法64条(労働者供給事業の禁止違反)
11 労働者派遣法4条1項の規定に違反した者に係る同法59条(適用対象業務以外の業務についての労働者派遣事業の禁止違反)

 

9.営業を許可されていない未成年者の法定代理人で、1号から8号までのいずれかに該当する者

未成年者でも婚姻をした者は成年者とみなされます(民法753条)。また、特定の営業を許された未成年者も、その営業に関しては成年者とみなされます(民法6条)。これらの者は、一人立ちで建設業を営むことができます。しかし、それ以外の未成年者が建設業の営業をするには、法定代理人(親など)の同意が必要です。そこで、法定代理人についても、審査の対象とし、法定代理人が1号から8号までの欠格要件に該当する未成年者には許可を与えないことにしたのです。

 

10.役員または政令で定める使用人のうち、1号から4号まで、または6号から8号までのいずれかに該当する者がいる法人(欠格要件に該当する以前の役員等は除く)

1号から4号までまたは6号から8号までのいずれかの欠格要件に該当する者を役員または政令で定める使用人にしている法人は、欠格要件に該当します。

このような法人は、適正に建設業を営もうとする姿勢が大いに疑われるとともに、これらの者を役員等として建設業の経営に関与させることを許していたら、欠格要件を設けた意味がなくなってしまうからです。

これには例外規定があります。10号のかっこ書きの部分です。役員等が本号記載の欠格要件に該当することになった場合、その建設業者の許可は取り消されてしまうのでしょうか。

例えば、X社の役員であるAさんは、自らも個人事業主として、建設業許可を受けて建設業を営んでいます。ところが、個人事業主としてのAさんは29条1項5号または6号により、許可を取り消されてしまい、2号の欠格要件に該当することになってしまいました。このような場合、通常、X社はAさんの許可取消しとは無関係であり、X社が許可取消しを受けるのは、酷な話です。

そこで、Aさんが、欠格要件に該当することになる以前からX社の役員であった場合には、X社の許可が取り消されないように、かっこ書きで本号の欠格要件には該当しないことにしたのです。

このことを下記の表で簡単に整理しました。

2号 29条1項5号、6号の許可取消しを受けた者 左記の者が欠格要件に該当する前から、建設業者である法人の役員等であった場合は、当該法人は10号の欠格要件には該当しない。
3号 許可取消しの前に廃業の届出をした者
4号 3号の廃業の届出をした法人等の役員等であった者
6号 営業禁止期間中の者
1号 成年被後見人等 左記の者が欠格要件に該当するに至ったことによって、当該法人は10号の欠格要件に該当することになる。
7号 禁錮以上の刑に処せられた者
8号 特定の罪で罰金以上の刑

 

11.政令で定める使用人のうち、1号から4号まで、または6号から8号までのいずれかに該当する者がいる個人事業主

本号は、前号(10号)と同じ趣旨の規定です。前号の法人を個人事業主と読み替えてください。