アップ対策1(理屈対策)とアップ対策2(具体策)を述べてきましたが、ここでは、一番大切なアップ対策を述べます。根本的な考え方です。一言で言えば、経営者のマインドを変えることに尽きます。経営者のマインドを変えない限り、真の対策にはなりません。

 答えは簡単。①金利を減らすこと(借金を減らすこと)、②粗利益を増やし、確実に経常利益を上げること、③自己資本を増やすこと、④総資産をスリム化することの4つでした。

 利益を上げ、余剰金を増やしていくことは、誰でも知っています。増資をすれば、資本金が増え、バランスが良くなり、経審がアップすることは、みんな思っていますが、実行できないだけです。なぜ実行できないのか、お金がないからです。

 それを達成するには、経営者のマインドを変え、達成させる情熱と中長期的な努力で可能になります。その一番最初の経営者のマインドを変えない限り、次に進むことができません。その最大のネックが納税意識です。この納税意識を変えない限り、経審アップや分析アップの真の対策になりません。

 利益と納税についての考え方を知ってください。

 納税額が増えることは、同時に内部留保が増えることでもあります。

 日本には数多くの会社がありますが、そのうちの約7割が赤字会社であると言われています。もちろん、商売が下手で赤字になっていることがありますが、税金の支払いを逃れるために赤字をつくっている会社も非常に多くあります。

 小さな会社の社長にとっては、税金対策、税務署対策も非常に重要な仕事の一つです。税務署との「ケンカ」は社長でなければできません。その意味において、これはとても難しい仕事だと思います。

 しかし、これについても、社長は新たな能力を磨いていかなくてはなりません。小さな会社では、一人か二人の経理担当者を雇い、彼らが作成した資料をもとに、社長は会社の運営について判断していると思いますが、社長自身も本などで勉強し、経理の知識を身につけることが必要です。

「税金が払える」というのは、「少なくとも税金に倍するぐらいの利益がある」ということを意味しています。そもそも利益がなければ税金は払えません。税金を払わなくても済むようにするため、赤字にも黒字にもならないスレスレのところを狙って経営する人も多くいますが、それは結局において、無駄な経費を使ったり、無駄な投資をしたりしているにすぎないことがよくあります。

 節税に夢中になっていると、放漫経営に陥るおそれがあることを知ってください。

「稼ぐに追いつく貧乏なし」と言われますが、毎年毎年、会社として利益をあげていくことを優先させるべきです。利益以上の税金はありえません。税金は利益の半分程度なのですから(現在は3、4割程度)、むしろ、「自分の会社も税金を納められる身分になりたい」と考えるべきです。

 また、毎年毎年、納税額が増えていくことは、同時に、利益が増えていくことも意味しています。違法なことでもしないかぎり、納税をせずに利益を蓄積できた会社はありません。納税額が増えていくことは、同時に、内部留保が増えていくことでもあります。この点を無視してはいけません。

 日本という国において経済活動の場を提供され、日本人を相手に商売をしている以上、それによって得た利益の一部は国家に還元すべきです。

 また、お金は天下の回りものであり、自分の会社が納めた税金は、やがては商売相手のほうへも流れていきます。お金の循環、法則を知ってください。自社が納税せずに、天下の回りものにはなりません。

「お金は天下の回りもの」という意味は、自分が税金を払うから、お金が回るのです。そういう意味で、「お金は天下の回りもの」であり、税金を払わない者には、「お金は天下の回りもの」という資格がないという意味です。その意味では、「事業によって得た利益の半分程度は公金である」と考えたほうがよいです。

 もちろん、節税がいけないと言っているわけではありません。合理的な節税をすることは大事です。ただ、「節税のみに社長のエネルギーを注いでしまっては、会社の発展はありえない」ということです。

 小規模企業は役員報酬を取って、増資資金にプールしておくべきです。府下、県下でBランクを目指し、大きな工事を受注するにも、余剰金が必要になります。いつもダム経営を意識され、納税と利益の意味を噛みしめてください。