防音講座である。
例のごとく「無暖房・無冷房の家に住む」のP143に「名前だけはブランドだが」という小見出しがある。音を知らない建築屋と施主の話である。
断熱屋は、全国区の参議院議員のように日本中を飛び歩いているので、頻繁にビジネスホテルなどに泊まることになる。過日は、大阪心斎橋の日航ホテルに泊まった。
フロントの女性は「ウチはシティホテルです」といって、部屋まで案内してくれるところはビジネスホテルより行き届いていると思うが、廊下でしゃべっているのがストレートに聞こえ、隣のバス、水の音からシャワー音、トイレでの用足しは最後の一滴までも鮮明に聞こえ、落下する高さが違うので男女の選別に苦労しない。
向こうの音が聞こえるなら、こちらの音も届くことになるから、テレビを最小限の音にして、これで隣にカップルでも泊まられたのでは寝ていられないので、ずいぶんと睡眠薬(酒)の量が増えてしまったではないか。
ビジネスホテルとどこが違うのか料金は2倍だよ、このような施設を受け取る施主がいる。造る者がいる。日航ホテルは一応のブランドだが、40年前に泊まった地方の旅館は3ミリのベニヤ板が間仕切だった。格好だけは30階ほどの近代ホテルと何ほどの違いがあるだろうか。
こんなものを作っても「ちっとも恥ずかしくない」建築屋の心理は、断熱屋にはどうしても理解できない。施主と施工、どちらもどちら程度のレベルでしかない。
こんな話をすれば1冊の本では済まないほど例がある。
すべては音を知らない建築屋の仕事で、なんらの対策もないまま畳をフローリングに取替えて「どうして、ここの施主はウルサイのか・・・」自分で住んでみろと断熱屋は怒るのだ。
同じ棒で畳を叩く、木の板を叩く、どちらの音が大きいか素人でも判断できる問題だが、その素人が建ててしまってから、「こんなはずではなかった・・・」全てが甘いのだ。
音の問題も建築屋に任せておいてはならないので、断熱屋の本を読むほどの読者諸氏ではすぐ理解できる講座としたい。