グループ経審の通達は、国総建第317号(平成20年3月10日付)に記載されています。
通達だけでは、グループ経審のことが解りませんので、国交省の建設業課に文章で問合せをしました。何点かの質問をさせていただきました。質問内容と回答は、次のとおりです。
グループ経審について教えてください。某上場会社ですが、グループ経審の件で、当事務所に依頼がありました。
親会社も子会社も建設業許可を取得しています。連結決算も毎期されています。依頼者は、両社の建設業許可を維持したままで、できる限り親会社の高いP点を利用して、子会社でグループ経審を受けたいと希望されています。その方法論として、グループ経審を知り検討しています。現時点では、親会社で単独経審を受けています。
当事務所ではグループ経審の実績がなく、また、実用的な情報もありません。上記目的を達成するために、何点かのご質問をさせていただきました。
1.グループ経審とは、どのような状況を想定されて制度化されたのでしょうか。
企業再編時における企業集団単位での能力を正当に評価し、業界再編を後押ししていく狙いから制度化されています。
詳細は、別添2枚目のスライドをご参照ください。
別紙というのは「企業の再編形態毎の経営事項審査等の取扱いについて(資料6)」をいいます。別紙を添付しています。
https://www.mlit.go.jp/singikai/kensetsugyou/keishin/070411/item7.pdf
〇 別紙2枚目の資料について(グループ化・子会社化)
・狙い
⑴ グループの規模拡大による価格交渉力・技術提案力等の向上
⑵ 競合の回避
⑶ 事業領域の補完(シナジー効果)
⑷ 経営状況の安定化
⑸ 合併に比べ機能的な経営戦略の展開
⑹ 合併に比べ、統合のコストやリスクを低減
⑺ 事業リスクの分担
・経審・技術者制度の取扱い
(グループ経審)
⑴ 企業集団毎に代表企業を決め、代表企業にグループ他社の完工高と技術者数を集約
⑵ 経営状況は、連結財務諸表で評価
(認定要件)
⑴ 企業結合により経営基盤の強化を行おうとする建設業者であること
(グループ内再編は認めない)
⑵ 企業集団を構成する建設会社間の機能分担が相当程度なされていること
(機能分社でなければ認めない)
⑶ 親会社が有価証券報告書提出会社であること等
(課題)
⑴ 業種単位での実績集約ではメリットに乏しいのではないか。
⑵ 認定要件が厳しいのではないか(適用事例が少ない)
・技術者制度
⑴ 原則的取扱い
グループ間で出向した技術者の現場配置は不可
(直接的かつ恒常的雇用関係と認められない)
⑵ 企業集団認定制度
企業集団認定の対象となったグループは、親子企業間の技術者の出向が可能。
(認定要件)
① 親会社が有価証券報告書提出会社であること。
② 親又は子会社のいずれかが経審を受けていないこと。
(課題)
認定要件が厳しいのではないか(適用事例が少ない)
2.上記目的を達成するにあたり、グループ経審に実用性はありますか。過去の実例はありますか。
前述のとおり、企業再編時を対象としていますので、恒常的にP点の向上を目指すという意味では、実用性はございません。令和6年3月時点で、実例は過去10年間でございません。
3.認定申請は親会社で申請しますか。子会社からの申請もできますか。
どちらでも可能です。なお、企業集団に含まれる全社からの承認は必要です。
4.認定の具体的な必要書類及び処理期間を教えてください。
申請書類は下記2点です。
⑴ 企業集団及び企業集団についての数値等認定申請書
(国総建第317号の通達に記載されている様式)
⑵ 連結財務諸表
その他確認書類として、下記関東地方整備局の手引きに従って、ご提出ください。
処理期間は、1ヶ月程度です。認定結果が必要な時期を提出先に事前相談いただくとスムーズに進むかと存じます。
5.経審の結果通知書は1枚でしょうか。
社毎に1枚です。
企業集団に含まれる会社は単独経審は受けられないことにご留意下さい。
6.経審の結果通知書が1枚の場合、親会社も子会社も使用できますか。
前述のとおりです。各社使用出来ます。
7.経営状況分析について、子会社で申請しなければなりませんか。
社毎に申請ください。
(電話での質問)
8.グループ経審は、毎年申請できますか。
グループ経審は、毎年、申請できません。1回きりです。
9.グループ経審の申請方法
認定後は、親会社は親会社でグループ経審の申請をします。子会社は子会社でグループ経審の申請をします。したがって、結果通知書は各社ごとに発行されます。
◎ 結論
グループ経審の制度化の回答が、「企業再編時における企業集団単位での能力を正当に評価し、業界再編を後押ししていく狙いから制度化されています」という回答でした。
また、2つ目の回答が、「前述のとおり、企業再編時を対象としていますので、恒常的にP点の向上を目指すという意味では、実用性はございません。実例は過去10年間でございません」という回答でした。
さらに、グループ経審は、毎年、申請ができず、1回きりという回答を得ました。
したがって、グループ経審のメリットは殆どないように感じました。
結論としまして、違った形でベストの対策を講じた方が良さそうです。
例えば、連結経審(国総建第321号)が一つの方法かと考えます。但し、連結経審は、経営状況分析(Y点)だけの連結になります。