1.概 要
商法上、営業所とは、対外的にも内部的にも営業活動の中心となる場所をいいます。したがって、単に事務処理を行っているだけの事務所は、商法上の営業所ではありません。ただし、世間では、単に事務処理を行なうだけの事務所のことを営業所と呼ぶことも、少なからずあります。
さて、それでは、建設業法でいうところの営業所とは、どのようなものでしょうか。
2.建設業法では
第3条1項のかっこ内を読むと、①本店 ②支店 ③政令で定めるこれ(支店)に準ずるものの(常時建設工事の請負契約を締結する事務所)3つが、建設業の営業所です。
3.通達では(昭和48年3月18日計建発46号)
「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行なう等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。
また、「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行なう事務所をいい、契約書の名義人が当該営業所を代表する者であるか否かを問わないので注意すること。
4.営業所の意味
建設業を営んでいる、建設業の営業活動をしている本店、支店などが建設業法でいうところの営業所になります。また、実際にその本店、支店で請負契約などの締結をしていなくても、他の営業所に対して、指導監督的な立場にあり、実質的に建設業に係る営業に関与していれば、営業所に該当します。
一般的には、本社、支店、営業所、出張所などで表現しますが、建設行為をするなら、通常の呼名にかかわらず、すべて「営業所」に該当します。本社も支店も通常の営業所も出張所も、建設業法では営業所です。
また、「常時請負契約を締結する事務所」も建設業の営業所として、通達で明確にしております。請負契約の見積り、入札、契約締結に係る実体的な行為をする事務所としてとらえています。この常時請負契約を締結する事務所が、一般的に言う出張所であろうと、支店であろうと○○営業所であろうと、その事務所も建設業の営業所に該当します。ただし、契約書の名義人が当該営業所を代表する者であるか否かを問わないので注意することを書いています。
建設業に関係のない業務の支店、営業所や、単に登記上の本店も、建設業の営業所に該当しません。また、建設業に関係があっても、特定の目的のために置かれる臨時の工事事務所や作業所も該当しません。
ゆえに建設業では、呼名は2つだけ。「主たる営業所」と「従たる営業所」です。主たる営業所は、建設業を営む「営業所」を統轄し、指揮監督する権限を有する1ヶ所の営業所をいいます。一般的な本社や本店と違う場合もあります。従たる営業所は、それ以外の支店、営業所や出張所のことです。
5.営業所の名前は?
名称は自由。もともと、各会社が自由につけていますから、法的なシバリはありません。例えば、大阪出張所でも、名古屋本部でも、本店でも何でもOK。そこで建設業を営むならば、建設業の営業所になります。
6.建設業の行為をしない営業所
例えば、東京支店があって、そこで建設業ではなく、兼業の物品販売業だけなら、建設業の営業所にはなりません。その東京支店で、建設行為をすれば、建設業法違反になります。
7.単なる登記上の本店
登記上の本店が東京都。現実に建設業を営む場所が大阪府とします。建設業の営業所は「大阪府」になり、大阪府知事の許可が必要です。
東京の方は、税制上の納税地であり、東京都知事の許可ではありません。
8.具体的には
大阪府でも、どこ県でも同じようなことを求めています。
① 請負契約の見積り、入札、契約の締結の実体的な業務を行っていること。
② 電話、机等の什器備品、帳簿類を備えるなど、事務所として建設業の営業を行うべき場所であること。
③ 請負契約の見積り、入札、契約の締結について権限を有する経営業務の管理責任者や令3条に規定する使用人が常勤していること。
④ 営業所に置く専任の技術者が常勤していること。
⑤ 大阪の場合は、事務所の写真が添付書類になっています。
9. 例えば
1.A社の神戸出張所が単なる連絡事務所で、契約、見積りなどは大阪にある本店ですべて行なっている。・・・この場合は建設業の営業所に該当しないので、建設業法違反になりません。
2.逆に次のような場合は、A社の神戸出張所は建設業法上の営業所に該当し、大臣許可の対象になります。
① 契約書は社長名義で調印されているが、実際の契約締結は神戸出張所が行っている場合。
② 見積りだけは神戸出張所で行っているなど、部分的ではあるが、契約締結に関与している場合。