1.経緯

「板金工事業」の新規許可の仕事をさせてもらいました。建築金物を取り付ける専門工種のお話です。

依頼者であるA社は、私の事務所に仕事を頂戴する前に、ある行政書士さんに新規許可を依頼されていました。建設業の最大要件である「経営管理責任者」も「専任技術者」も揃っていて、他にも要件が欠くところがない、すんなりいくケースです。

ただ、「経営管理責任者」の証明者が倒産会社でした。その会社は破産申請中なので管財人である弁護士さんの証明になります。こういう場合の大阪府の取り扱いは、管財人の印鑑証明書を添付して、管財人である弁護士さんが7号様式である「経営管理責任者」に証明することになっています。

実はこの取り扱いも矛盾しています。管財人である弁護士さんが「経営管理責任者」や「専任技術者」の証明が出来るはずがないのです。管財人として、破産者の財産管理の証明はできると思いますが。この考え方や取り扱いは別の機会にするとしまして。

くだんの行政書士がすべての要件がそろっていたので、府庁に申請した。しかし、申請時点では、その弁護士さんは管財人の職から離れてしまっていて、今は管財人でないから、この証明は無効になるので、受付してもらえなかった。という経緯が前提条件になります。

 

2.本番

もっとも、その行政書士も半年以上もその案件を引き伸ばした経緯があり、管財人の職にある時に申請しておけば、すんなり許可になっていたはずです。

ここからが本番です。管財人の職を離れたから、管財人の時に証明した事実証明が無効になるはずがない。理不尽な話であります。その行政書士は受付拒否をされた段階で引き下がった。私は納得できない。印鑑証明まで付いた完全な事実証明です。

さっそく、当時の統括主査であったSさんに話を持ち込んだ。

「おかしな話ですな。こんなことで受付を拒否されるのですか? 事実証明は事実証明です。管財人を降りたから、効力がない。おかしい話です。許可グループで再度検討なさってください。検討の余地がないならば、とことんいきまっせ! こんな理不尽な話はおまへんで。Sさん、おかしいと思いまへんか。運用を変えてください。回答いかんでは、部長を飛び越えて知事までいきまっせ! 今一度、検討なさってください」

Sさん、「わかりました。許可グループのテーブルにのせて検討します。一週間ほど待ってください。連絡します」

三日ほどで返事がきた。個別案件として検討しました。事実証明として変わりないものとして、取り扱い(運用)します。OKである。

スッタフに指示して、ジェット機よりも早く書類を作成して申請した。もちろん許可を頂戴した。依頼者は諸手を上げて喜んでぐださった。

 

3.結論

許認可だけで終わる手続屋だけではダメである。許可になったからOKではない。きちんとした裏づけをもって許認可事項を進める。裏づけとは、法律や通達、行政指導や運用のことを指します。確固たる自信があれば、大きな声で行政と餅つきが出来ます。

国土交通省のエリート達が出す、都道府県の通達にも間違いがあります。その間違いに気づかず、一字一句ごもっともです、そのままそっくり都道府県の通達にする。かつて、国土交通省の通達を訂正してもらったこともあります。

許認可と権利義務・事実証明のマッチングとは、手続きと特別法や法律に強くなってください、という意味です。少なくとも、得意技の法律関係は。

建設業なら建設業の専門家になれば、行政書士のみが味わえる強みであります。それが争いごとになっても、優秀な弁護士さんは、一日ぐらいで建設業法をマスターして、翌日、依頼者に77秒で処方箋を出せましょうか。おそらく、皆無でしょう。

だから、一知半解な知識で望まないこと。例えが建設業許可でお話をしましたが、どんな業務も同じことです。許認可と権利義務・事実証明(法律)のマッチングが必要です。

広くは不要。一つの業務でマッチング出来れば最高。誰にも負けないマッチングを創れば、お客さんにも喜んでもらえるし、己の研鑽にも繋がり、一石三鳥です。

お客さんに徹底した指導が可能になり、その企業は大きく繁栄発展します。その後に絶大な信頼を得ることになります。