年に何通かのお手紙を頂戴する。その中に達筆すぎて、私には読むことができない。草書体で書かれているので、お手紙の内容を理解できない。その類の辞典を引き引き努力をするが、時間がかかる。

 たいていは書道何段か、長年習字のお稽古をされている方が多い。私はいつも思う。お手紙をいただくのは嬉しいが、もうちょっと、私に読める字を書いてほしい。

 手紙は必ず相手が特定しているので、やはり、受け手が読める字で書いていただくのがマナーで、心配りでもある。ご本人は悪気もなく無意識で、当たり前のように書かれているかも知れないが、これは私に言わせれば無神経である。

 お上手なのは分かっている。手紙は己の字を自慢するものでも、展覧会に出品するためでもない。特定された方へのコミュニケーションであり、内容の問題ですよ。一番大事なことが欠けているように思う。

 件(くだん)の草書体のお手紙は、たいていは通り一遍の内容で感ずるものがない。せめて、字ぐらい楷書体で書いてください。書道の先生は、手紙の書き方をお教えにならないのでしょうか。

 もっとも、私の字も褒められたものではない。姑流(しゅうとめりゅう)である。嫁憎い。よめにくい。読みにくい。