商社時代のA先輩のお話です。

 A先輩は、一流大学を卒業されて入社されました。非常に頭のよい方で、私など足元にも及びません。しかし、同期の先輩方がA先輩よりも早く次長や課長に昇進されているのに、なぜか、A先輩だけは出世コースから外れ、上層部から期待されていませんでした。

 いつも不思議に思っていました。A先輩と他の先輩の違いはどこにあるのか。他の先輩方の優れた点はどこにあるのか。先輩方に悪いと思いながら、それとなく観察させていただきました。

 その後、他の先輩方の仕事ぶりに教えられることが多くあり、そんな中、非常に活躍されている方の仕事ぶりには、共通点があることに気づきました。それは、仕事への情熱ででした。溢れんばかりの熱意でした。仕事ができる方の熱意は半端ではありません。A先輩に足りなかったのは「熱意」だったのです。その時のA先輩と言えば、必ずしもそうではありませんでした。

 どれほど頭のよい人であっても、熱意がなければ道は開きません。熱意があればこそ、その仕事に磨きがかかります。

 陶器を焼く場合、たとえ、どのような名陶器職人が焼いたとしても、その粘土がいくらよかったとしても、その上薬がいくらよかったとしても、その模様がいくらよかったとしても、釜の火の熱が足りなければ、よいものは焼けず、よい陶器は決してできません。よい色艶を出し、見事に焼き上げるために必要な火が、熱意です。この熱意なくしては、いくら材料がよくとも、いくらデザインがよくとも、一級のものはできません。

 結局、熱意が勝っていなければ駄目だということですね。

 仕事には、体力も必要でしょう。知力も必要でしょう。しかし、すべてに勝るものは熱意です。熱意のある仕事こそが、ほんとうに道を開いていきます。熱意なきときには、決して、よい仕事はできません。

 A先輩とは、仕事以外のお付き合いもあり、ある日、勇気を出して熱意の話をさせていただきました。すると、A先輩いわく「自分でもよく分かっている。俺には俺のやり方がある。そのうち、俺の情熱が爆発する時がくるさ。静かに見ていてくれ」

 その後、A先輩は、パルブの交換部品に関して良きアイデア提案をされ、そのプロジェクトチームがスタートしました。その責任者として、A先輩の情熱が爆発しました。やがて、他の先輩方を飛び越えて、取締役部長に昇進されました。

 やはり、仕事においては熱意が求められます。仕事に磨きをかけ、輝きを生み出すのに必要なものは熱意です。熱意こそ、よい仕事を生み出します。