免疫学の世界的権威者である安保徹先生の著書「人が病気になるたった2つの原因(講談社)」からのお話です。

 安保先生は、人が病気になる原因は、たった2つ「低酸素」と「低体温」であると説明されます。低酸素とは呼吸が浅いことであり、低体温とは体温が35度台の人を言い、理想的な体温は36.4度です。36.2から36.3度ならば健康状態と言えます。この2つの原因で病気になります。そして、低酸素と低体温を引き超すのは、ストレスが一番で、食べ物や運動は二番手だと力説されます。では反対に、深呼吸で呼吸法を整え、正常な体温にもっていけば、病気が快復することは間違いありません。

 安保先生は分かりやすく説明されます。

「たとえば、仕事で無理をして寝不足が重なると顔色が悪くなり、次第にほおがこけてくるでしょう。そうなれば自然と体温が下がり、酸欠状態にもなります。また、心配事が重なるとなどしてメンタルな面でストレスがたまっても、血流が悪くなり、顔が青ざめ、呼吸が浅くなるでしょう。これが、私がいう低酸素・低体温の状態です。しっかりと休息をとり、体を温めれば脱却できますが、忙しさにかまけて放っておくと、この状態が日常化します」。

「これが体に良くないことはわかると思いますが、ではこうした低酸素・低体温状態がなぜガンの発症につながってしまうのでしょう」と前置きされて、ガン細胞について書かれています。

「まず理解してほしいのは、恒温(こうおん)動物である人間には一定の酸素と温度が必要だということです。この二つの条件が得られなくなれば当然、生きにくくなります。その結果、顔色が悪くなるといった形で現れるわけですが、体はこうした状態から抜け出そうと、これに対応できる細胞を新しく作り出します。じつはそれがガン細胞なのです。ガンは低酸素・低体温の環境に対する適応現象として現るれるもの。ガンになる理由は、それ以上に複雑なものではありません」。 

 さらに、「遺伝子などをわざわざ持ち出さなくても、自分自身の日常生活を振り返れば、なぜガンになったか見えてきます。もちろん、三大療法に依存しなくても、低酸素・低体温状態に陥った生活を見直していくことで、治癒させることもできます」。

 三大療法とは、手術、抗ガン剤治療、放射線治療のことです。安保先生の多数ある書籍でも、三大医療でガンを治すことを戒めておられます。三大医療の功罪については、改めて記事にします。

 長くなりますが、安保先生のお話を続けていきます。

「ガンになるということは、要はその人の生き方の問題なのです。これが大前提にあることをまず理解する必要があります。遺伝子や発ガン物質に原因を求めてしまうと、こうした肝心な点がぼやけてしまいます」。

「低酸素・低体温に陥ったしまうような自分の生き方を振り返ることなく、それどころか、この状態に適用しようとした細胞、すなわちガン細胞を悪者扱いし、ただ取り除こうとするだけでは、ガンは決してなくなりません。ガンは自分の体に悪さをする存在ではなく、生きにくい状況に適応しようとする体の知恵そのものです。低酸素・低体温の状態に適応し、最大限のエネルギーを発揮する存在といってもいいかもしれません。ガンは必死になって生き延びようとしているだけで、広い意味では、あなた自身の体がそうやって延命を図っているのです」。

「それを忌み嫌って、ただ取り除こうと考えることが何を意味するかわかるでしょうか?---ガンは適応現象であり、体の失敗で生まれたものではない。こうしたとらえ方ができるか否かで、ガンになったときの対応の仕方も、心の持ちようも大きく違ってきます。ガンを死に至る病気であるととらえて恐れる気持ちも、きっと変わってくるでしょう。ガンだけに限りません。現代医学が陥っている『病気は悪である』という発想そのものにも、大きな疑問符がつけられるはずなのです」。

 ガンに対する新たな捉え方や考え方を教えていただきました。ガンに対する私自身の考え方も大きく変わりました。

「では、低酸素・低体温の状態のとき、なぜ細胞はガン化してしまうのか?」この点についても考えていきましょう。引用が長くなりますが、お付き合いください。

「まず大前提として理解しておきたいのは、生命活動の根幹にある細胞内のエネルギー産生の仕組みについてです」。

「私たちの体は、食べ物の栄養素や呼吸から得た酸素を細胞まで運び、活動エネルギーに変えることで生き続けています。人が呼吸をし、食事するのは、全身の六〇兆もの細胞にエネルギーの原料を送り込むためであり、こうした燃料をもとにした細胞内のエネルギー産生が生命活動の基盤になっているのです」。

「そして、エネルギー産生のシステムは、『解糖系』と『ミトコンドリア系』という二つのプロセスに分けることができます。わかりやすくいえば、人間には細胞内に、性質の異なる二つのエネルギー工場があるのです」。

 一つは「解糖系」と名付けられた製造工場です。もう一つは「ミトコンドリア系」と名付けられた製造工場です。

 解糖系の製造工場は、食べ物から得られる栄養素をエネルギーに変換します。原料になるのは主にブドウ糖(糖質)です。糖を分解するだけの単純なシステムで、すぐにエネルギーが作り出せるのが特徴です。ただ、即効性がある分、一度に作り出せる量は少ないです。解糖系は栄養素だけをエネルギーに変換し、酸素は必要としません。作られる場所は「細胞質」で、利用される場所は、「白筋・皮膚・精子など」です。瞬発力と即効性があり、酸素を嫌います。

 一方、ミトコンドリア系は、解糖系で分解された栄養素に加え、呼吸によって得られた酸素などを必要とします。また、たくぱく質などの多くの要素も関わっています。作られる場所は、細胞内のミトコンドリアという器官です。解糖系とは比較にならない多量のエネルギーを生み出します。熱を作り、持久力があり、酸素が好きです。

 したがって、解糖系は無酸素運動をし、ミトコンドリア系は有酸素運動をします。この2つの製造工場をうまく使い分けることが、バランスのとれた生き方につながります。

 この二つの製造工場である解糖系とエネルギー系のバランスが大事だと力説されています。ガン細胞が発生する理由は、「解糖系とミトコンドリア系のバランスが崩れてしまい、無酸素の解糖系ばかりが稼働するようになったとき、ガン細胞が生み出せれやすくなるのです」。

 同書はガンを中心に書かれていますが、ガン以外の病気もすべて、解糖系とミトコンドリア系のバランスが崩れた時に発生し、その結果、低酸素・低体温の状態が続き、何の対策もぜす放置した時に病気になります。

 そして最後に安保先生は、「ガンにならない八つのルール」を示されています。これはガンだけではなく病気と置き換えても良いと考えます。

「①心の不安やストレスに目を向ける。②頑張りすぎの生き方を変える。③息抜き、リラックスの方法を見つける。④体を冷やさない工夫をする。⑤暴飲暴食はやめて体にやさしい食事をする。⑥有酸素運動を生活に取り入れる。⑦笑いや感謝の気持ちを大事にする。⑧生きがい・一生の楽しみ・目標を見つける」。 

 それぞれについて詳細を示されていますが、①~③は、ストレスから解放することです。④~⑥は、食事や適度な運動のことです。⑥⑦は、潜在意識と関係する心の持ち方です。つまり、安保先生は、現代病の要因は、ストレスが一番で、食べ物や運動は二番手だと書かれていて、対処方法もその順番になっています。

 病気の要因として、運動不足や食べ物の影響も大きいと考えていましたが、ストレスが最大の要因で「低酸素・低体温」の状態になり、様々な病気を誘引します。また薬を飲まず、自分の体は自分で治すことも教えていただきました。この本の帯には、「人類はついにガンも克服した。100年に1度の大発見!!」「糖尿病も高血圧もメタボも認知症も怖くない!」と書かれていました。健康に関する良書というより名著だと思います。