建設業許可の最大要件である経管(けいかん)が改正され、令和2年10月1日からスタートしました。従来からある建設業法第7条第1号の基準を受けて、建設業法施行規則第7条第1号に「イの要件」「ロの要件」「ハの要件」の3つが規定されました。

 イの要件が、従来の経管要件と大差なく、中小零細企業に一番なじみがある要件です。

 ロの要件は全くの新設要件です。大企業向けの要件です。ハの要件は、国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したものです。

 主に、イの要件とロの要件について説明いたします。

 ここでは、常勤役員や執行役員を例にしていますが、「経営業務の管理責任者としての経験」とは、個人事業者の場合は当該個人又は支配人も含みます。また、法人格のある各種組合の理事等、株式会社等の支店長、営業所長も含まれます。

 

◎ 建設業法施行規則則第7条第1号の「イ」の要件

 イの要件は、以下のとおり3つあり、いずれかに該当すれば経管になれます。

1.建設業に関し5年以上の常勤取締役の経験者

 建設業に関し5年以上、常勤取締役の経験者です。従来と同じであるが、建設業の種類ごとの区別は廃止され、建設業の経験として統一されました。

 つまり、建設業の種類に関係なく、常勤取締役としての経験が5年以上あれば可能になりました。例えば、造園工事で2年、電気工事で1年、土木工事で2年、合計5年で可能です。建設工事の種類に関係なく、土木工事以下29種類の工事なら何でもOKということです。

 

2.経営業務を執行する権限の委任を受けた者(執行役員等)

 この規定は新設です。建設業に関し5年以上、役員に次ぐ地位にある者、例えば部長職です。但し、経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限るとなっています。

 委任の限定をつけました。いわゆる、執行役員がこれに該当します。準ずる地位は変わりませんが、委任を受けた場合は5年以上です。

 

3.準ずる地位(従来と同じ、年数が6年以上に)

 建設業者に関し6年以上、役員に次ぐ地位にある者、例えば部長職です。但し、経営業務を執行する権限の委任がない場合です。従来からある準ずる地位と全く同じです。但し、従来は7年以上でしたが6年以上となり1年短くなりました。

 

 

◎ 建設業法施行規則則第7条第1号の「ロ」の要件

 経管要件が2つあって、常勤役員等の要件と、それを直接に補佐する者の要件が必要になり、最低二人体制でないと認められない経管要件です。常勤役員を補佐する要件も、財務管理、労務管理、業務管理の3つに限定されています。

 これらの経管要件は全くの新設です。殆ど、中小零細企業者には関係のない規定だと思います。大手企業のために新設された規定だと、個人的には理解しています。

 まずは、建設業施行規則第7条第1号のロの要件をそのまま記載します。非常に理解しにくい規定になっていますが、最後までお付き合いください。

 

(建設業施行規則第7条第1号のロの要件)

 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。

⑴ 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者

⑵ 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者

 

 以上が、建設業施行規則第7条第1号のロの要件ですが、まずは、常勤役員等のうち一人が、上記の⑴か⑵のいずれかに該当しなければなりません。

 ⑴の要件は、建設業に限定した規定になっています。建設業における常勤役員として最低2年以上のシバリをかけていますので、必ず、建設業で2年以上の役員歴がないとダメです。さらに「かつ」という表現を使っていますので、この建設業における2年の常勤役員歴を含み、建設業において5年以上の建設業に関する財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当する役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者とありますから、すべて建設業における経験です。通算で5年以上あれば可能となります。

 例えば、建設業の常勤役員が2年、財務管理の役員に次ぐ地位が3年で、通算5年で可能となります。この場合、建設業の常勤役員歴が1年で、財務管理の役員に次ぐ地位が4年で、通算5年になっても該当しません。

 これが⑴の要件です。非常に分かりにくい規定ですが、要は、建設業において最低2年の役員歴があり、なおかつ、財務管理、労務管理、業務運営の3つに限定した役員歴か役員に次ぐ地位を求めていますので、この3つ以外の業務では認めてもらえません。

 

 次に⑵の要件を説明します。

 ⑵の要件は、建設業以外の役員歴を含めた規定になっています。但し、建設業における2年以上の役員歴が必要で、通算5年以上です。建設業以外の役員歴を認めたところが、経管要件の緩和になっています。

 例えば、建設業における役員歴が2年以上あり、他業種である役員歴が3年以上あれば、通算5年以上で可能になります。

この⑵の要件は、建設業における役員歴も他業種の役員歴に関しても、経験してきた業務内容は問いません。単純に役員としての経験です。⑴の要件のように財務管理等のシバリはありません。

 

 次にロの要件の後段部分の説明に入ります。

 上記の⑴か⑵のいずれかの要件を満たした者(常勤役員等)を直接に補佐する者が、最低もう一人必要になってくる内容になっています。

 直接補佐する者の経験内容は、5年以上の財務管理、労務管理、業務運営の経験です。この場合の経験は、既に建設業の許可を受けている建設業者にあっては、当該建設業者における経験です。これから許可を受けようとする建設業を営む業者にあっては、当該建設業を営む建設業者における経験です。

 

 結論として、建設業施行規則第7条第1号のロの要件は、一人では要件を満たさないということです。最低2人体制でないとロの要件を満たすことができません。

 例えば、ロの⑴か⑵のいずれかの要件を満たす常勤取締役Aさんがいて、Aを直接補佐する要件を持ったBさんとセットで、ロの要件を満たすということです。

 

 以上、建設業施行規則第7条第1号のイとロの要件を説明してきました。中小零細企業者にとっては、ロの要件は殆ど影響のない改正だと言えます。

 最後に、ハの要件もありますが、これは「国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの」と規定しています。