積載形トラッククレーンの購入を予定されている得意先の社長からの相談です。

 確かに高度安全機械等導入支援補助金は、積載形トラッククレーンに安全装置(過負荷防止装置)を取り付けた時に補助金の対象になります。車両価額ではなく安全装置に対して補助金が出ます。

 この補助金の申請できる会社が、中小企業者等であることや建設業許可を取得していることが条件にあります。最大の問題点は、安全装置(過負荷防止装置)に条件が3つあり、この条件のすべてをクリアしている場合に補助金の対象になります。

 条件の一つ目は、つり上げ荷重が3t未満の積載形トラッククレーンに取り付ける過負荷防止装置であること。

 二つ目は、過負荷となった場合に警報を発し、かつ、停止する機能を有するものであること。

 三つ目は、日本クレーン協会規格JCAS2209-2018「積載形トラッククレーン過負荷防止装置の基準」に準拠する型式であること。メーカーの証明がいります。

 問題は、二つ目の過負荷となった場合に警報を発し、かつ、停止する機能を有するものであることですが、得意先の社長によりますと、警報を発するのはいいですが、停止する機能をもつものは、使いものにならないということです。いちいち停止していたら、仕事にならないからでしょう。

 思わず笑ってしまいました。確かに安全装置ですから「停止」しないと安全装置とは言えないと思いますが、仕事にならないと話になりませんね。

 念のために、販売店の社長にも伺いましたが、「停止する機能をもつクレーン車」を注文される建設業者は皆無だということです。これで納得しました。建設現場で使いものにならないものを購入しても、建設業者は困るだけです。

 得意先の社長は、リース車は停止機能があり、使いものにならないから購入に踏み切ったとおっしゃっていました。確かに安全は確保しなければならないと思いますが、建設現場で充分に機能しないなら意味がないとも言えます。

 個人的な意見ですが、実に面白い補助金制度があるものだと思いました。大半の建設業者が購入しない「過負荷となった場合に警報を発し、かつ、停止する機能を有するものである」積載形トラッククレーンに補助金をつけていることになります。安全装置に関し何も知らない私で偉そうなことは言えませんが、少し矛盾を感じました。

 様々な補助金制度がありますが、上手な利用方法を構築していけば、会社の資金繰りを良くしたり、新規事業につながるヒントを得て、間接的にお金が貯まる経営につながる面があります。また、補助金制度をよくよく検討すれば、付加価値の高い仕事にシフトしていく一面もあります。いずれにせよ、補助金制度は諸刃の剣というところでしょうか。補助金ばかり当てにする経営も考えものですが、工夫次第では効果を期待できる面があります。