私の好きな言葉の一つに「不動心」があります。

 不動心は、よく氷山に例えられます。それは、氷山の見えている部分は1割程度で、見えていない部分が9割もあります。非常にどっしりとしています。氷山のように動じない心が不動心です。

 不動心は一朝一夕でできあがるものではありませんが、氷山のように、海面下に確かな自分を創っていくことが、その基本だと思います。つまり、蓄積の部分が大きいほど、不動心は揺るぎないものになっていきます。人生の氷山をつくるために、蓄積がいかに大事かということです。

 会社経営者にしても、会社従事者にしても、蓄積の部分が貧弱なら、良い経営もできませんし、会社に利益をもたらすこともできません。各自の専門性を極め、誠実に、正直に、感謝を忘れず、謙虚に蓄積の部分を深めていかなければなりません。

 それには「ダム経営」の実践に尽きると考えます。お金のダム、人材のダム、信用のダム、人格のダムです。一番大切なダムは、社長自身の人格のダムです。これを日々の実践行為として、成長させてください。自ずから信用のダムも、お金のダムも、人材のダムも形成されていきます。

 また、会社経営にとっては、会社の大目標、中目標、小目標を立て、実践していくことも重要なことですが、それ以上に「一日一日」が大切です。

 ひと口に人生と言っても、それは結局、一日の連続体、毎日の積み重ねです。一日については、古くから様々なことが言われています。「一日一生」という言葉もありますし、「一日の苦労は一日にて足れり」というイエスさんの言葉もあります。

 一日で一生が終わるとしたら、あなたは何をしますか。何を考えますか。一時間、一時間、いや一分、一分、どのように使いますか。

 目標設定も大事なことですが、一日一日を大切にされている経営者は、三年もすれば、目を見張る経営者になられています。社長さん自身の「人格のダム」はもちろんのこと、信用のダム、お金のダムも半端ではありません。

 例えば、3千万円の集金したお金を、いざという時のために別の預金にされました。その後、その事を全く忘れてしまい、日々の経営をされていた得意先の社長がいます。経理担当者から話を聴くまで、全く知らなったといいます。その3千万円がなくても、充分に資金繰りが出来ていたからびっくりです。まさに氷山のように隠れた部分が多く、不動心の経営者でした。その理由は簡単です。一日一生の気持で会社経営をされているからです。特に人格のダムを創るために、非常に努力されています。