初代が苦労して会社をつくった場合、たいていは、二代目に高い学歴をつけ、勉強のために大会社などに入れています。しかし、その二代目を大会社からそのまま持ってくると、大会社の経営方法をストレートに持ち込み、会社をつぶすことがあります。

 大会社というところは非常に大きなシステムを組んでいるので、中小企業では使えないやり方が多く、中小企業がその真似をしてもほとんど無駄な場合が多いようです。

 ところが、二代目や三代目は、大会社を真似ていろいろなことをしはじめ、結局、会社をつぶしてしまいます。

 父親は息子から「大会社ではそうしている」と聞くと、「そうか」と思って、そのままやらせるのですが、その結果、なぜか事業がうまくいかず、従業員の心も離れていき、だめになってしまいます。

 そのため、「息子には教育も経験もつけたのに、なぜこんなことになるのか」と思うわけですが、企業には規模相応の考え方やふるまいがあることを知ってください。

 それから、中小企業の社長は、人材が欲しくて、よく大企業からスカウトしたがるのですが、スカウトしても成功しないことが多いようです。私の得意先にも同じようなことをされて、結局、辞めてもらったケースがほとんどでした。

 例えば、大会社の営業課長を自社の営業部長にすえ、「これなら発展するだろう」と思ったにもかかわらず、実際には発展せず、結局、その人に辞めてもらうことがよくあります。

 なぜかといえば、大企業と中小企業では考え方が違うからです。

 大きな会社では、個人は権限の範囲が非常に小さく、歯車の一部になっています。一方、中小企業では、オールマイティー(万能)というか、ある程度、いろいろな仕事ができなければいけません。深い知識はなくてもかまわないのですが、広範囲の仕事ができないといけません。

 大企業でやり手だという人には、狭い範囲のことを深く知っている人が多いのですが、その意味では、つぶしのきかない面があって、中小企業では失敗することがよくあります。

 したがって、発展を目指すときに考えなければいけないのは、規模相応の考え方をしていくということです。

 その際、どの程度の規模が妥当かは、トップの器量や能力によるので、「自分はどこまで持ちこたえられるか。どの範囲までならやれるか」ということを、常に自分に問う必要があります。

 大企業と中小企業では、考え方が違うということを知ってください。