汗をかく、冷や汗もかく

　得意先のＫ社長のお話です。

　Ｋ社長は、元々「Ｓ社長からの贈り物」で紹介したＳ社長の従業員でした。Ｓ社長は自分の会社を閉鎖し、新たにH社を設立されました。新設会社の社長に就任されたのがＫ社長でした。Ｓ社長に見込まれて、28歳の若さで社長業がスタートしました。Ｓ社長の従業員23名がＨ社に転籍となり、Ｋ社長より年輩の方ばかりでした。

　その後、順調に業績を伸ばされて、現在では、地元有力会社の1社になりました。お世話になって22年目になりますが、この間、多くのご苦労があったと思われます。ご自分より10歳も20歳も年上の従業員さんと一緒に仕事を進めていくには、尋常な精神では乗り超えられません。多くの葛藤もあったことでしょう。眠れない日々もあったことでしょう。

　最近、Ｋ社長ご自身の相談を受けた時に、会社経営について尋ねてみました。

「Ｋ社長、会社経営で一番大事にされていることは何ですか」

「やっぱり、汗をかくことです。まず、私自ら汗をかきます。下請さんに頼るばかりでなく、自社のメンバーも汗をかくように、いつも言っています」

「汗をかくことですか」

「そうです。汗をかいて、えぇ仕事してもらいます。やっぱり、汗をかかない人間はあかんし、すぐに辞めます。良い汗をかいてもらいます。私なんか、冷や汗も多くかいてきましたが」

「冷や汗ですか」

「そうです。冷や汗の連続みたいな男ですわ」

「ところで、若い頃は年輩の従業員さんばかりで、大変だったでしょう」

「いや、そんなことはありません。私は恵まれています。結構、かわいがってもらいました。恵まれています。従業員にも、下請さんにも、お得意さんにも、多くの方に育てもらいました。そうですねぇ、感謝ですか。感謝の一言に尽きます」

「そりゃ、腹の立つことも結構ありました。その時に従業員の良いところを見ようと努力してきました。経営の難しいことは分かりませんが、これだけは大事にしてきたつもりです」

「そうですか。良いところを見る。感謝を忘れない。冷や汗を多くかいてこられた甲斐がありましたね。これが繁栄発展の秘訣ですね」

　Ｋ社長のように、多くの冷や汗を良い方向に向けられた結果、「感謝」という真心が生まれてくることを知りました。いつも感謝を忘れない経営者は、従業員さんも周りの方も応援してくれます。若い社長であっても、本気で接してくれます。冷や汗も感謝の入口であり、忘れられない一日になりました。

　汗をかく、冷や汗もかく。Ｋ社長、ありがとうございます。