お世話になって40年になります。F社長のお話です。

 毎年の年賀状に、心温まる一言を手書きで添えてくださいます。全面印刷の味気ない年賀状よりも、F社長の一言が琴線に触れ、年の初めに喜びが増幅されます。

 建築工事の専門業者です。工業高校の建築科を卒業されて、中堅の某建築会社に勤務され、現場監督の経験を活かされて、40年前に独立されました。ものすごくキップのいい社長です。

 小さなプレハブの事務所からスタートされ、20年前に2階建の自社社屋を建築されました。現在は、地元でナンバーワンの建築会社に繁栄発展されています。

 当時のプレハブ事務所に伺うたびに、事務所内は書類の山です。電話がかかってきます。また電話です。また電話です。F社長の商魂逞しい波動が伝わってきます。毎年、お伺いするたびに売上が増え続けていきました。

 F社長が某建築会社で現場監督をされている時の話を、違う方から教えてもらったことですが、それは「すご腕の現場監督」だったと話されます。また、某建築会社も従来から知っていましたので、そこの社長さんも、「Fの現場は、安心して任せることができる。鬼より怖い監督ですが、大工さんをはじめ職人さんの面倒見は、私も真似ができないぐらい思いやりに溢れています」。

 このお言葉どおりのF社長でした。私も最初は、怖い人だという印象を持ちましたが、やがて、F社長の思いやりを知ることになります。

 冒頭にお話した年賀状が、その一例です。ある時、F社長に尋ねました。

「会社経営で一番大事されていることは、どのようなことですか」

「信頼です」。信頼の一言。「もう少し詳しく教えてください」

「自社が今日までやって来られたのは、従業員をはじめ、お得意さん、協力会社、応援してくださる方々の信頼のお陰です」

「もちろん、感謝があっての信頼です。感謝です。思いやりです。感謝も大事ですが、やっぱり、思いやりを一番大事にしています。偉そうな言い方ですが、思いやりのない経営者は、会社を潰しています。多くの事例を見てきました。特に現場で働く人を大事にしない経営者は、ダメですね。サラーリマン時代から、いろんな現場を経験してきましたが、思いやりのない現場代理人や人扱いしない経営者は、信頼できません。だから、信頼関係を築けない現場は、どこかで収斂され消えていきますね。やっぱり、信頼です」

「信頼関係があれば、競争相手もなく、特命で大きな工事が決まることもあります。やはり、信頼関係を築いていくことが、経営では一番大事なことだと思います」

 深い思いやりと感謝が信頼関係を築いていきます。会社経営の極意ですね。言葉を換えれば、「愛、素直な心、感謝、謙虚」を忘れないことが、繁栄発展を呼び込みます。