社長が個人で見る範囲が三十人を超えたあたりから、組織というものを組み立てていかなければならなくなります。組織を組み立てていく能力がないと、三十人以上の会社の経営はしだいに難しくなってきます。

 社員が三十人ぐらいになると、電話番をしたり、出張、旅行などのスケジュールを管理したりするために、女性の秘書が一人ぐらいは必要になりますが、男性の秘書はまだいなくても大丈夫だと思います。

 奥さんで経理がまかなえるのは三十人ぐらいの規模までです。奥さんに能力がある場合でも、百人ぐらいが限度でしょう。

 したがって、「家内が会社の財布を握っているから安心できる。印鑑や金庫を預かっているのが家内だからこそ安心できる。家内なくして、うちの会社は成り立たない」と思う人は、それ以上の規模にしないほうが、ある意味では幸福な経営を保つことができます。

 大きな会社になると、奥さんの能力でまわっていくはずがありません。経理部長にはもっと能力のある人が必要になってきます。そのため、家族以外の人にまかせなければいけなくなります。人にまかせるだけの器がなければ、大きな会社の経営はできません。

 それでは、三十人から五十人、百人、そして、二、三百人までの発展段階においては、何が大事でしょうか。

 たたき上げ社長や職人肌の社長には、自社の商品、製品以外には何も分からない人が非常に多いので、組織が大きくなると、自分ができないところを人にポンとまかせて、まかせっぱなしにすることがよくあります。その結果、ここで、将来の発展の芽を摘むようなことがよく起きます。

 この段階で気をつけなければいけないのは、社長が絶対に目を離してはいけない部門があるということです。

 一つは財務です。入金と出金、銀行預金がどうなっているかといった資金全体の動きから、目を離してはいけません。

 もう一つは人事です。これも、二、三百人ぐらいの規模になるまでは、目を離してはいけません。これを人まかせにすると、自分の思いに沿わない組織が出来上がってくるので、三百人の規模に持っていくまでは、社長は獅子奮迅しないといけません。

 その際、「自分の能力が頭打ちになった場合には、それまで」と思わなければいけません。

 したがって、どうやって自分の能力をアップするかが大事です。勉強もしなければいけないし、人の話も聴かなければいけないし、いろいろな経験もしなければいけません。努力して努力して、夜も眠れないような経験をしないと、大きくなりません。

「社員が三百人ぐらいの規模になるまでは、社長は財務と人事から目を離すわけにはいかない」ということを知っておいてください。