「責任回避する」という思いは、自分の保身のため、自分を護るためには、どうしても出てくるものですが、やはり、リーダーの資質としては落ちます。

「それは自分の責任ではない」「自分には権限がなかった」「そういう指示は受けていない」「許可をもらっていない」など、いろいろな理屈はたくさんありますが、責任回避するリーダーの下にいる人には、熱い熱意が盛り上がってくることはありません。責任回避する傾向が自分のなかにあるとしたら、どうか、心して闘い、打ち勝ってください。

「責任回避」というのは、自分の身を護るための知恵でもありますが、やはり、醜いものです。努力して、責任を取る人間、リスクテイキング(危険を引き受けること)な人間にならなければいけません。特に、新しい道を開こうとするなら、責任回避を乗り越える努力をなさってください。

 責任回避の典型的な例が、役人などに見られます。彼らには、「前例主義」とか「外から、いろいろな圧力をかけられなければ動かない」といった傾向があるでしょう。「前例がないから断る」「政治家など、どこか上から圧力がかかってこなければ、やらない」「マスコミが騒がなければ、やろうとしない」「本人ベースでも三回以上は陳情に来なければ、相手にしない」などというようなことをたくさんしています。

 つまり、「何かをした場合には責任が出るので、しない。しなければ責任を取らなくて済む」という考え方です。これは、最も生産性が低い考え方であり、これに勝たなければ、新しい付加価値を生むことはできないし、「自由の下の発展」ということもありません。

 私も大阪府行政書士会の会長をしていた時期があり、日本行政書士連合会の理事も兼ねていましたから、中央官庁などの役人の責任回避は、実体験として、多くの現場を見てきました。あまり良いものではありません。もちろん、役人だけではありません。金融機関も責任回避を平気でやるところがあります。情けないの一言です。そして、民間の会社でも、多くの責任回避の現場を見てきました。実に醜いものです。

 反対に「これは社長である私の責任です」「従業員に責任はありません。私が悪いのです」という得意先の社長も多く見てきました。実に気持ちの良いものです。こういう器のある社長は、逃げませんし、言い訳もしませんし、他のせいにしません。朗らかに経営をされていて、リーダーシップの見本みたいなものです。心の余裕さえ感じます。

 このような立派な社長は責任回避の微塵もなく、「何か道がないか」ということを常に考えていらっしゃいます。「何か積極的に道を開く方法はないか。何か新しいアイデアで切り抜けられないか」ということを、いつも考えて経営をされていますので、繁栄発展されています。

 やはり、責任回避は、会社経営にとっては繁栄発展の道を阻害するものと捉えてください。気持ちよく責任を取り、新しい道を切り開いていってください。