◎ インボイス制度の概要

 インボイス制度といわれる正式名称は「適格請求書等保存方式」です。

 インボイス制度は、仕入税額控除(課税売上から課税仕入に関する消費税を控除すること)を受けるための新たな改正です。

 導入後については、消費税を納める必要のある企業や個人事業主はもちろんのこと、免税事業者についても影響があると考えられます。いつから改正になるのか。インボイス制度の内容と個人事業主への影響などを説明します。

 

◎ 適格請求書発行事業者の登録申請書

1.適格請求書等保存方式の開始日

 令和5年10月1日からスタートです。

 

2.登録申請のスケジュール

 ⑴ 令和3年10月1日から(既にスタートしています)

 ⑵ 令和5年3月31日まで(令和5年10月1日から登録を受けるために

  は、原則として令和5年3月31日までに登録手続きを行う必要があり

  ます)

 

3.登録申請書(別紙)

 登録申請は簡単にできます。

 「適格請求書発行事業者の登録申請書」と「適格請求書発行事業者の登録申請書(次葉)」の2枚だけの申請書です。シンプルです。

 登録申請は「郵送」、「e-Tax」の電子申請でも可能です。

 

4.課税事業者の登録について

 インボイス発行事業者の登録は、課税事業者でなければできません。

 免税事業者の登録については、次に説明いたします。

 課税事業者は、上記の期間(令和5年3月31日)までに、自ら登録申請をしなければなりません。税務署からは何も言ってきません。

 

5.免税事業者の登録について

⑴ 免税事業者の登録

 免税事業者が登録を受ける場合には「登録申請書」及び「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。しかし、インボイス制度の開始に当たっては、課税事業者選択届出書の提出を不要とする特例が設けられています。

 免税事業者が令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、令和5年3月31日までに登録申請書を提出すれば、登録許否要件に該当しない限り、令和5年10月1日に登録され、令和5年10月1日からインボイス発行事業者である課税事業者となります。

 この場合、令和5年10月1日からその課税期間の末日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び課税仕入等を基礎に申告書を作成することになります。

⑵「消費税課税事業者選択届出書」の提出
 2023年(令和5年)4月1日(令和5年3月31日)以降に「適格請求書発行事業者」の登録申請をする場合には、上記⑴の事業者登録に加えて「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければなりません。

 

6.免税事業者の注意点

 免税事業者や消費税などを登録していない者は、登録番号を記載したインボイスを交付することができません。したがって、適格請求書を発行できない事業者からの仕入れは「仕入税額控除」ができないという点です。従来は請求書がない場合、支払先の名称や請求書のない理由を帳簿に記載することで仕入税額控除を受けることができました。

 しかし、インボイス制度により「仕入税額控除」の要件が「適格請求書」でなければならないとされたため、より厳しく規制されることになります。

 これにより会社は、材料の仕入先から経費の支払先まで「適格請求書」を発行できる事業者を選定し直さなければならなくなります。

 免税事業者は、仕入税額控除をできないという理由で、取引から排除される可能性、あるいは、消費税相当額を支払わない交渉をされる可能性があります。つまり、次のようになる可能性が考えられます。

・取 引 先 「適格請求書を出してほしい」
・免税事業者 「免税事業者だから出せない」
・取 引 先 「じゃあ他の課税事業者に頼むからおたくとは取引しない」

 取引先が「仕入税額控除」の恩恵を考えれば、このようなシナリオになるのは必然です。

 したがって、免税事業者の方が取引を続けたいのであれば「消費税課税事業者選択届」を税務署に届出して課税事業者にならなければなりません

 今まで消費税納税額の分だけ得をしてきた免税事業者の方も、インボイス制度により納税義務が生じることになります

 

◎ 適格請求書に記載する内容

 インボイス制度といわれる正式名称は「適格請求書等保存方式」です。具体的には、下記の6要件を満たした請求書や納品書を交付・保存する制度です。 これにともない、課税事業者である取引先からの求めに対し、適格請求書を交付しなければならないといったケースが充分考えられます。

 

  表1-適格請求書に記載する内容

1

インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

2

取引年月日

3

取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)

4

税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

5

税率ごとに区分した消費税額等

6

書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 

◎ インボイス制度でなにが変わる

1.仕入税額控除とは

 インボイス制度導入で一番問題となるのが「仕入税額控除」です。消費税の納税額を、原則的な計算方法で簡単に表すと以下の通りとなります。

 預かった消費税から支払った消費税を引き算した差額が納付する消費税となります。
 この計算の中で、預かった消費税から支払った消費税を控除することを「仕入税額控除」と呼びます。もし仮に「仕入税額控除」が認められないと大変なことになります。

 「仕入税額控除」を認めてもらうためには、支払った際に受け取る請求書や領収書の記載内容、書類の保存方法の一定要件を守らなければなりません。

 

2.従来の制度としては「請求書等保存方式」が適用されていました

 「請求書等保存方式」は、インボイス制度と同じく請求書等を引き算する消費税額の証拠資料として保存する制度です。しかし、以前は消費税が一律だったため、適用する税率を表記する必要がないなど、比較的簡単な要件でした。

 しかし、2019年(平成30年)10月1日に消費税率が改正された際、一部の品目(食品、新聞の購読料など)に軽減税率が適用されました。

 その結果、8%と10%の2種類の消費税率が混在することになりました。こうした複数税率が適正・円滑に運用されるように「区分記載請求書等保存方式」が導入されます

 これにより、たとえ軽減税率が発生しない、つまり複数税率が発生しないような業種であっても、消費税率を明記する必要が出てきました。

 なお、この区分記載請求書等保存方式は2023年(令和5年)10月1日にインボイス制度が導入されるまでのつなぎ制度です。インボイス制度が始まるとさらに「登録番号の記載」等が義務付けられます。

 

3.インボイス制度は仕入税額控除の要件になる

 仕入税額控除を受けるための要件は、「請求書等保存方式」から「区分記載請求書等保存方式」に変更となりました。さらにインボイス制度導入により「適格請求書等保存方式」へと変更されることになります。制度実施に伴い、一定事項の記載がある帳簿と請求書等を保存する義務が発生します。

 

4.適格請求書発行事業者の義務が免除されるもの

 インボイス制度導入により、買い手は適格請求書等を保管することが原則になりますが、中には請求書等の交付を受けることが難しいケースもあります。下記の7つのようなケースは、適格請求書発行事業者の義務が免除され、一定の要件を満たす帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます。

 ⑴ 3万円未満の公共交通機関を利用した際の乗車券

 ⑵ 自動販売機でのジュースの購入

 ⑶ ポスト投函での郵便サービスの利用

 ⑷ 出入り口で回収される入場券

 ⑸ 従業員に支給する日当や宿泊費

 ⑹ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源等の購入
  (請求書等の送付が困難で、一定事項が記載された帳簿が保存される場

   合に限る) 

 ⑺ 古物商等が適格請求書発行事業者でない者から購入した棚