夫が亡くなり、自宅の不動産を誰の名義にすれば良いか、相談を受けました。
相続人は、妻、長男、次男です。他に不動産もありませんので、相続税の対象にはなりません。
1.誰の名義にするか
① すべて妻の名義にする方法
とりあえずは、スムーズに相続登記が進むかと思いますが、近い将来(妻が死亡時)に、また相続登記が発生し、あまり良い方法とは言えません。なぜならば、長男は遠方で次男と離れているため、妻の名義のまま長年放置されることが予想され、代が変わってしまうと、なかなか相続登記がスムーズに行かないケースが多くみられ、それで困り果てている方が世の中に多くあります。こういう相続問題は、きちんとする時にきちんととしておいた方が良いと考えます。ダイレクトに、長男か次男の名義にするのがベターだと思います。
② 長男と二男の共有名義にする方法
二人の共有名義にする方法は、一見、公平で良いように思われますが、将来、どちらかが住む場合には、どちらかの単独名義にしておくことです。代が変わり、長男や次男の甥、姪の印鑑が必要なケースが発生し、いつまでも共有名義のままで、どうすることも出来ないまま、長年放置されるケースが多くあり、これも困ります。
また、長男も遠方に持家があり、次男も地元に持家がありますので、妻が亡くなった段階で、間違いなく土地建物を売却し、換金するのなら、それまで二人の共有名義しておけば、一番公平でスムーズに今回の相続登記は進むと思いますが、将来のことは誰もわかりません。親より先に息子の方が死亡するケースもあり、代襲(だいしゅう)相続になったりして、顔の知らない方の印鑑が必要になったりするケースも発生します。
いずれにせよ、土地や建物はあまり共有名義しない方が望ましいのです。売却する時もスムーズに事が運びますし、住む場合もスムーズに相続や贈与手続が進めます。将来のことは誰も予測がつきませんので、一代で解決することは一代限りで決着をつけておいたほうがベストだと思います。
③ 単独名義にする方法
長男か次男の単独名義にする方法です。私は、この方法を勧めます。
長男なら長男名義にします。その変わり次男には、現金相当額で解決します。現金相当額の金額査定は難しいですが、妻の老後も考慮に入れ、妻の資金繰りの許す範囲内でしょうが、妻はある程度は出しても良いと言っています。反対に、次男の名義にする場合は、長男に現金相当額が動きます。いずれにせよ、現金相当額は、妻の老後も考慮にいれ、妻が提示する範囲で納得すべきでしょう。
妻が元気な間に、きちんとしておきたいようです。子や孫、ひ孫、玄孫まで、遺恨を残すようなことはしたくないとも言っていました。妻、長男、次男が元気な間に、相続を確定しておきたと考えています。亡くなった夫も、その事を気にされて亡くなったようです。
妻名義や共有名義は、時間が経ち、代が変われば、ますます名義変更や売却等が難しくなりますので、いずれかの単独名義にする方法を推奨いたします。
母親は今は元気です。しかし将来は分かりません。どちらかが、母親の面倒を見るかで判断されても良いし、母親の家に近い次男が土地建物を相続し、長男が現金相当額を受け取って解決しても良いと思います。また将来、長男が地元に戻って、家を継ぐのであれば、長男の名義にすれば良いでしょう。その時は、次男が現金相当額で納得する方法もあります。
④ 遺言方式
一旦、妻名義に相続して、妻が遺言書を残す方法です。もちろん、どちらかの単独名義にする遺言です。その場合も、現金相当額も書いておきます。
この方法もあまりお勧めではありません。遺留分の問題も発生しますし、やはり先のことは予測できません。つまり、現金相当額が妻の相続時で残っているどうか疑問ですし、誰が遺言執行人になるのか、やはり不安定要素が多くのこります。
3.結論
やはり、三人が元気な間に、話し合いで、単独名義にすることが寛容かと思います。
あまり長引いても意味がありません。三人が離れていることもあり、どこかで決着をつけることです。
お互いが譲り合いの心で、単独名義にする方向で進めることだと思います。
土地建物を取るか、現金相当額を取るか、これは三人で話し合って決めることです。私の入り余地はありませんが、依頼を受けた以上、公平的にこの文章を綴っています。互いが寛容な精神で、譲るところは譲り、あまり欲を出さず、円満に相続登記を進めることです。
どちらかが、土地建物になっても、どちらかが現金相当額になっても、文句を言わず、一歩進めることです。土地建物を取った方が、将来、現金相当額以上に売却できたとしても、一切文句を言わないことです。譲り合う心があれば、その時、考えれば良いことです。まずは迅速に、相続手続を平和理に進めることを望みます。