別の記事で説明しますが、営業倉庫の設備基準をクリアしないと、登録に向けて進めることができませんが、その前提として、建築基準法に違反していない建築物であることです。つまり、確認済証及び検査済証がある建築物です。

 

1.確認済証及び検査済証があること

建築時の確認済証及び検査済証が手元にあれば、倉庫業の登録がスムーズに進みます。つまり、建築確認申請後に許可書と一緒に役所から返却された書類の中に、壁や床の強度が分かる構造計算書で、すぐに壁や床の強度がクリアしているかどうか判断できるからです。

これらの書類が手元にない時は、土地所在の市役所等で閲覧できますが、許可後5年間が経過すれば廃棄しますので、壁や床の強度計算を最初からする必要があり、これらのことを一級建築士なり公共機関で証明してもらう必要があります。

 

2.確認済証及び検査済証が手元にない時

建築から5年経過した建築物で、役所にも手元にも、確認済証及び検査済証の書類がない場合は、上記1で述べたとおり、一級建築士なり公共機関で証明書を添付しない限り、倉庫業の登録申請は前に進めることができません。

倉庫業の登録申請をされる建築物は、建築確認申請がなされ許可を得て、検査済証がある物件が前提ですが、管轄の役所では「建築物台帳記載事項証明書」を発行してくれます。但し、この書類は、簡単な概要がわかる程度で、確認申請をした物件で検査を得た事を証明してくるだけの書類ですので、壁や床などの詳細な構造計算が判断できる書類ではありません。

したがって、確認済証及び検査済証の書類が手元にない場合は、倉庫業の登録申請に余分な時間と別途費用がかかると考えてください。

 

3.営業倉庫が賃貸物件の場合

大家さんの手元に確認済証及び検査済証の書類があれば、ある程度、スムーズに登録申請が進むと考えます。しかし、これらの書類がない場合は、上記2で述べたように一級建築士なり公共機関で証明してもらう必要があります。その場合に、大家さんが心よく承諾されるとは限りません。ましてや、事前調査の承諾を得ても、調査後に建築物の手直しがある場合には、費用負担も発生しますので、承諾されるケースは皆無です。

上記の理由で、営業倉庫が賃貸物件の場合は、大家さんの承諾が得られないのが通常であり、諸々の費用等を申請者が全額負担されるなら、前に進めることができます。しかし、その場合には、違う物件を探される方が賢明です。

 

4.既存不適格建築物とは(法3条2項)

既存不適格建築物とは、建築基準法の改正や都市計画法による地域、地区などの変更などにより、すでに存在する建築物やすでに着工している建築物が、新規定に適合しなくなったものをいいます。いわゆる既得権を持つ建築物のことで、違反建築物とは異なり、区別されています。なお、建築物が新しい規定に不適合になった時期の始まりのことを基準時といいます。

法律には、その改正や変更により新規定などに適合しなくなった場合、その新規定については、過去にさかのぼって適用することができないという「法律不遡及の原則」があります。したがって、既存不適格建築物についても、新規定の適用は除外されるため、そのままの状態を存続している限り、新規定に適合するように建築物を修正する必要はありません。この場合は、営業倉庫の登録を進めることができますが、あとは、壁や床等の設備基準をクリアする必要があります。

 

5.建築基準法の適用除外が認められない場合(法3条3項)

次の①または②の場合は、建築基準法の適用の除外は、認められません。したがって、新法令の規定が適用されます。

① 新法令、新地域地区の施行の際、すでに従前の規定にも不適合である違反建築物。

③ 新法令、新地域地区の施行や適用後に増築、改築、大規模の模様変、大規模の修繕などをする場合(原則として、既存部分を含めて、新法令の規定に適合するようにしなければなりません)。ただし、増築、改築、大規模の模様替、大規模の修繕で軽微なものについては、緩和規定があります。

 

6.既存不適格建築物に対する制限の緩和(法86条の7、令137条2~12)

既存不適格建築物であっても、次に示す各条の軽微な範囲では、増築、改築、大規模の模様変、大規模の修繕が認められます。軽微な範囲の具体的な内容については、令137条2~12に定められています。

⑴法20条(構造耐力)、⑵法26条(防火壁)、⑶法27条(特殊建築物の耐火、準耐火)、⑷法30条(長屋、共同住宅の界壁)、⑸法34条2項(非常用の昇降機)、

⑹法48条1項~12項(用途地域内の用途制限)、⑺法52条1項~8項(容積率)

⑻法59条1項(高度地区内などの容積率、建ぺい率)、⑼法61条(防火地域)

⑽法62条(準防火地域)など