得意先であるK建設会社のA社長は、公共工事の積算名人です。これと思った公共工事に関しては、1万円の誤差もなく落札されます。A社長に「その秘訣は」と尋ねますと、教えてくれません。A社長なりの何か極秘の予算立てがあるらしい。

 A社長の会社は、社長を含め3名で経営されている少数精鋭主義を徹底されています。長年、お世話になっていますが、毎期、数千万円の税金を納付されている超優良会社です。

 A社長自ら、各現場ごとの原価計算をエクセルを利用して作成されていますが、売上高より利益率を重視され、その徹底ぶりは、他社が真似ができないところもあります。

 例えば、役所が算出した予算に対しても、役所に良き提案をされて、落札された契約金額に追加予算を出してもらえるぐらいの交渉をされる方です。もちろん、役所のために良き提案をされていますので、役所の方も対応されたと思いますが、結果的には自社の利益率がアップしています。

 下請工事の場合にも、元請さんに利益率アップにつながる良きアドバイスをされて、結果的に黒字金額が増えることになり、元請会社の社長もいつもニコニコ顔です。

 A社長の素晴らしいところは、上記のような積算名人に加えて、どのような相手に対しても人を責めないということです。長年お世話になっていますが、A社長にして、私の一番好きなところであり尊敬しているところです。

 役所の人に対しても、元請さんに対しても、下請業者に対しても、A社長と関係のある方々に接する態度に教えられるところがあります。一旦はじっくりと相手の方の話を最後まで聴かれます。例えば、自分が好まない相手でも、A社長の対応は変わりません。どのような相手でもいつも同じ対応をされます。

 そして、いやな相手や欠点だらけに思えるような方でも、必ず受け入れて、彼らを良い方法にもっていこうとされます。ここがA社長の素晴らしいところです。彼らに対して、罵倒したり、悪口や不平不満など一切話されません。いつも彼らが成長してくれることを望まれています。

 まだまだ、A社長の素晴らしいところがあります。

 このようなA社長ですから、下請業者等から相談事がいつも舞い込んできます。A社長は、どんな相談ごとでも自分のことのように、その解決策を一緒になって考えられます。ご自分の仕事がどんなに忙しい時でも、相談事を優先され、いつも良い方法を模索されています。

 その相談事を解決するために、時には私にアドバイスを求められます。私も一緒になって相談にのります。様々な相談事があって、私自身も良い勉強になります。

 A社長は、非常に智慧のある経営者です。積算名人もすごいですが、A社長の相手に対する思いやりが半端でないところが、優良会社の秘訣だと、いつも感心しています。